2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

●言葉によってすべてを把捉したいと思っている人、というか、たんに「言葉」が一番偉いと思っている人は、「言葉では把捉できないことがある」というような話をすると、すぐ神秘主義だとか「詩に逃げる」とかバカげたことを言い出すのだけど、全然そんなこと…

●外は夜で、ぼくは、間口が狭くて奥へと長くつづいている建物に入ってゆく。そこには人が大勢いて、なかには知り合いも何人かいる。建物の奥に向かって進みながら、目が合った知り合いから声をかけられ、こちらも挨拶を返す。「こんにちは」「こんにちは」。…

●今、目の前にあって見えている柿のオレンジ色、見る度に、毎回新たなものとして立ち上がってくるその色の感触と、しかしそれが、今まで何度も見たことのある、「柿のオレンジ色」と同じ感触をもつものだと判断すること、つまり、そこにあるものは未知の果実…

●雨のなか傘をさして散歩。途中、ものすごい巨木が庭にある農家の、門の脇の無人販売所にあった柿の色に惹かれて、それを買った。次郎柿、二百円と書かれていた。貯金箱みたいな料金入れに百円玉を入れると、ガチャンという予想以上に大きな音がした。かなり…

●昨日の日記で引用したラカンの、最初の《先日私はちょっと休んで眠っていたとき、目覚めぬうちに何か戸を叩く音がしたおかげて目覚めなくてすみました》というところと、最後の《私が一見したところ私を目覚めさせるノックのもとで夢をみはじめた一瞬》とい…

●『精神分析の四基本概念』は、内容としてだけでなく、文章として(というか、セミネールだから「語り」として)も面白い。例えば、「テュケーとオートマトン」という章の次の文、《先日私はちょっと休んで眠っていたとき、目覚めぬうちに何か戸を叩く音がした…

●やらなければならないことを、無理矢理に自分にさせようとしむけるには、部屋にいたのでは誘惑が多いので、寒い雨のなかでも、駅前の喫茶店へと向かうことにする。寒さのせいなのか、それとも、遅くまで寝ていて昼過ぎに起きて、しばらくぼんやりしていて、…

●展覧会を観に行って、帰りに図録を買って、帰りの電車のなかでそれを開いてみると、今、観て来た絵画の印象と、図録に印刷されている図版の印象があまりに違うことに愕然とするのだが、しかし、展覧会を観てから時間が経ってくると、徐々に、作品の印象は繰…

●モーリス・ルイスについて、もうちょっと。 昨日、ルイスの作品について、「色彩は決して見切ること(イメージ化すること)が出来ない」というようなことを書いたけど、これは、あくまで作品を「観る」という側に立っての話で、つくる側に立つとまた別だ。ル…

●川村記念美術館でモーリス・ルイス展。予想をはるかに超えて素晴らしくて、打ちのめされた状態。ぼくは、大学生時代、ルイス命だったのだが(そして今日、学生時代のその感覚は決して間違ってはいなかったと再確認したのだが)、まるで、昔付き合っていて別れ…

●三軒茶屋のシアタートラムで、岡田利規演出の『友達』(作・安部公房)、代々木の秋山画廊で、小林聡子展。(実は、18日のレクチャーは、『友達』とモーリス・ルイス展を観るためのお金を得るために引き受けたようなもので、近いうちに絶対川村記念美術館にも…

●レクチャー、メモ。 ●今、目の前にあって見えている色のもつ「感覚の質」は、それを「今、見ている」ということによってしか発生せず、そこから目を外すと消えてしまう。しかし人は、ショッキング・ピンクとかバーミリオンとか言うし、マティスのブルーとか…

●阿佐ヶ谷美術専門学校でレクチャー。内部の学生より、外部からの聴講者の方が多い。とはいえ、あくまでこじんまりした感じ。全員の顔がはっきり見えるくらいの、このくらいの少人数の方がかえって緊張する。緊張するというか、大きなテーブルのまわりに、誰…

●昨日の日記で書いた桜金造の怖い話が面白いのは、怪談(一種の幽霊談)でありながらも、「宇宙人好き系」の感触が強く感じられるところだ(「宇宙人好き系」と「幽霊好き系」の違いについては、http://www008.upp.so-net.ne.jp/wildlife/nisenikki.htmlの、08/…

●視覚化できないイメージというものがある。例えば、桜金造の怖い話に「一ミリの女」というのがあって、ある男がずっとアパートの部屋にこもりきりで、仕事にも出て来ないから、心配して様子を見に行くと、男はたった一人で部屋にいるのに、「女がさみしがる…

●午前中は散歩。柿の木めぐり。いつもの散歩の時に見て記憶に残っている、近所にあるいい感じの柿の木のあるところを、線で結ぶように歩いた。 ●午後から喫茶店で、18日の阿佐ヶ谷美術専門学校(http://www.asabi.ac.jp/)でのレクチャーの構想を考えていた。…

●府中市美術館の「トゥルー・カラーズ」という展覧会の、内覧会とオープニング・レセプション(展覧会は明日から)。 今澤正の作品を観ていつも感じるのは、「色を観る」ということの不思議さだ。ぼんやりと輝くような微妙な色彩の組み合わせによって出来てい…

●18日のレクチャーでは、10日の日記に書いた、色彩を今(「私」が)見ていることと、記憶やイメージとの混合の話がまずあって、それと、昨日書いた、ホラーに出て来るような幽霊や分身や幽体離脱を発生させる、複数の独立した系列とその短絡(接触)の話があって…

08/11/12(水) ●レクチャーのために、『呪怨2(劇場版)』(清水崇)を改めて観直して、とても面白かった。「朋香」というパート(新山千春が主演)が面白くて好きなのだが、「千春」というパート(市川由衣が主演)がまた、短いけど圧倒的に面白いので、こちらもレク…

●大きな段ボール箱が二つ、どかっと届いた。これを、あと一ヶ月ちょっとの間にこなさなければならないと思うと、胃のあたりがぐっと重くなる。 ●18日の阿佐ヶ谷美術専門学校でのレクチャーについて、もう少し考えた。そこで取りあげようと思っている作品のリ…

●18日のレクチャーの準備を、ちょっとだけした。 色彩を見ることと幽霊を見ることとは、その直覚性と、再帰的な捉え直しの困難さにおいて似ている、と前に書いたけど、ちょっと違うところもある。幽霊とはイメージであり、イメージとは既に反復されたもの(既…

●朝、目が覚めたのだが、とりあえず風邪を治してしまおうと思い、午前中いっぱい寝ていることにする。朝起きたときも、昼過ぎに再び起きたときも、寒くて、窓の外はどんよりと薄暗い。寒いのはともかく、目覚めて窓の外が薄暗いと、なんとなく気が重い(ぼく…

●風邪ひいた。去年の秋頃から、風邪をひいたという記憶がないので、一年以上ぶり。二、三日前から喉が痛くて、ちょっとヤバい感じかなあと思っていた。陽射しは強いので散歩をするとかなり汗をかいて、しかしその汗は、気温が低いからすぐ体を冷やしてしまう…

●お知らせ。「文学界」12月号に、『星のしるし』(柴崎友香)の書評、「分身と宇宙人と精霊」を書いています。 ●お知らせ、その2。11月18日(火)の午後一時半から、高円寺にある阿佐ヶ谷美術専門学校(http://www.asabi.ac.jp/)というところでレクチャーをしま…

●フランケンズを観るために江古田まで行く途中、中央線が人身事故で止まってしまったのだが、ぼくの乗った電車が止まったのがちょうど国分寺だったので、西武線に乗り換えて、なんとか開演ぎりぎりに着いた。所沢から江古田までの間、まず急行に乗って石神井…

●昨日、永瀬さんのブログを読むまで、川村記念美術館でモーリス・ルイス展をやっているなんて、まったく知らなかった(http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/index.html)。もしこれを見逃したら、おそらくぼくが生きているうちには、日本では二度とル…

●「トビウオって飛ぶと思います?」「トビウオだから飛ぶんじゃないですか」「トビウオが飛んでるところを見たことありますか」「いや、ないですけど」「ドビウオが飛ぶのって、イルカのジャンプみたいなのとは違ってて」「えっ、水面からピョンてジャンプす…

●多摩川アートラインプロジェクト(http://tamagawa-art-line.jp/2008/10/2008_4.html)のイベントの一つで、東急目黒線の蒲田-多摩川間をはしる三両の電車のなかで、三人の演出家(柴幸男、中野成樹、山下残)がつくったパフォーマンスが行われる、というのを観…

●歩いていて、自分の前側にひろがる空間は、目で見ることが出来るから大きな広がりとして感じられるが、それに比べ、後ろ側に感じている空間はどうしても小さくなる。後ろから聞こえる音に意識的に注目することと、それまで歩いて来た記憶(今、後ろ側に広が…

●お知らせ。「映画芸術」425号に、北野武『アキレスと亀』のレビュー、「お母さん、あのね」が載っています(内容にぴったりのスチール写真をつけていただいて感謝します)。送られてきた雑誌をみて、前の感じに戻っていたので、「あれっ」と思いました。「映…