なんか、いつも同じことばっか言ってるような気がするけど、冬の空って、なんでこんなに透明感があって、光ったような感じなんだろうか。昨日なんか、二日酔いのまま空をぼうっと見ながら歩いてたら、青い空にぐちゃぐちゃとはしる黒い線みたいな電線が、急にものすごい存在感で眼の中にどーんと飛び込んできて、吐きそうになった。
ほくは生まれてから、神奈川と東京にしか住んだことがないし、北の方へは旅行にさえ行ったことがないのだけど、北の方の冬の空って、もっとすごいのだろうか。宮澤賢治の「 ひのきの歌 」のなかに、
(ひかり雲ふらふらはする青の虚空
延びたちふるふ みふゆのこえだ)
というのがあるけど、これなんか、字を見てるだけで、クラクラしてしまう。
ちょつと凄いマンガを発見。いがらしみきお「 ガキおやじ 」。コミックモーニング連載中。
このマンガのどこが面白いのかといえば、まったく面白くないところが面白い。
言うまでもないことだけど、いがらしみきおは、独特の、ヒネった下ネタの4コマものでデビューし、かなりマニアックな人気を得るのだけど、突然、一年間、休筆して、その後作風を大きく変化させ、「 バグがでる 」というマニアックな傑作と「 ぼのぼの」のメジャーなヒットによって復活した。それももう十年くらい前のこと。
つまり、キャリアも技術もセンスも充分以上にあるマンガ家で、この人が普通に描いていれば、まあ、ふつう以上には面白いものが出来て当然な訳で、それをあえてこんなに、つまらない、ものを意図的に描くのはキャリアのある職業作家としてはとても大胆でリスクの大きいことなのではないか。この、凄みのある面白くなさ。
この「 面白くないことの面白さ 」を大胆に追求しているマンガの面白さを説明するのはとても難しいのだけど、あえて言えば「 本当に下らない下ネタ 」の一言。初期の頃の、センスを感じさせる、シュールでブラックでヒネった下ネタ、とは全然違って、本当に「 本格的に 」下らない、のだ。この、徹底した下らなさ、徹底した外し方、徹底したダサさ、は半端ではない。読みながら、このシラーッとした空気をどう処理してよいか分らずに途方に暮れてしまうくらい。ひとつひとつのギャグのなんとも言えない外れ方、絵や構図なんかのダサさもすごい。並みの作家にはマネできない。本当にこれでいいのか ? いがらしみきおは一体何処へ行こうとしているのか ? と読んでいて不安になってくる。頭を抱えて悩みたくもなってしまう。しかし、この不安はとてもスリリングなものだ。
設定や物語については、ここでは触れません。一月には単行本が出るらしいから、是非チェックしてみて下さい。本当に"すっごく"つまらないですよ。
しりあがり寿(ただし「 真夜中の弥次さん喜多さん 」"だけ"は傑作)や、とり・みき、みたいなハンパで小賢しい外し方じゃないし、一時ちょっとだけ流行ったバカマンガともヘタウマなんかとも全然違う。ど真ん中、ストレート、豪速球、の外れ方。堂々としている。しかし、こんなに堂々とつまらなくていいのか・・・。これから一体どうなってしまうのだろう・・・。大いなる不安と、ちょっとだけの期待。(興奮にまかせて、こんなに大袈裟に書いてしまったけど、実は連載の一回分しか読んでないのだった・・・。)