今朝は水道の水がやけに冷たい。米をとぐ手が凍りそう。でも、風邪はちゃんと峠をこえてる。深夜、空腹で目が覚めて、食べるものがロクにないで、古くなってパサパサのクロワッサンをガツガツと食べ、ものたりなくて、仕方ないからビタミンCのタブレットをバリバリ喰らい、この食欲なら多分大丈夫だろうと思って、また寝たのだった。
三日ぶりに髪を洗い、三日ぶりにヒゲを剃る。重たいものがとれて、身体が軽くなった感じ。でもまだ完治したわけじゃないので、調子こいてると元の木阿弥。
今日から来年の二日くらいまで、またちょっと、ごちゃごちゃ忙しい。全く世の中のカレンダーとは無関係に動いてる。
 --外に出たら空一面に拡がる、うろこぐも。鰯雲。鯖雲。(巻積雲)。記号、Cc。
 --しゃがんだ時に目にはいった、アスファルトの表面の凸凹。
 --その隙間に入り込んでいる、乾燥して割れた落ち葉。
 --生け垣の隙間から、漏れている光。日光。
 --その光が、地面につくる、まだら模様。
 --片輪が外れて、傾斜している自動車。
 --駅のコインロッカー、ゴミ箱が使えなくなってる。
 --電車の窓から見ると、うろこぐもがいつの間にかなくなっている。
 --ぼわっ、と、だらしなく拡がった、ひこうき雲
 --それが、すじ状になって、何本も重なっている。
夕方、コバルトグリーンの空に、紫がかったショッキングピンクの雲。という、サイケデリックで電気的な色彩のすごい夕焼けを見た。普通に、きれいだ、なんてとても言えない。こんなにドギツい色が自然界にもあるんだ。
(「 ひこうき雲 」なんて曲を思わず聴いてしまう。けっこう泣ける。ぼくの持っているCDは、最近出て大ヒットしたあのベスト盤ではなくて、94年にアルファレコードから出た「 ユーミン・シングルズ 72-76 」というのを中古で買ったやつ。つまり、荒井由実時代のシングルコレクション。ユーミンのベスト盤としてはこれで十分。「 ベルベット・イースター 」も「 あの日に帰りたい 」も「 やさしさに包まれたなら 」も「 ルージュの伝言 」も「 12月の雨 」も「 ひこうき雲 」も入ってるんだから。これ以上は必要ないでしょう。「 卒業写真 」がないとか、「 サーフ天国、スキー天国 」がないとか、「 恋人はサンタクロース 」がないとか、「 ディストニー 」がないとか、「 リフレインが叫んでる 」がないとか、そんなことは枝葉末節なこと。それらの曲なんて全て「 ベルベット・イースター 」一曲で吹っ飛んでしまうでしょう。それにこのころのユーミンの、アレンジ=演奏をやつてるのがキャラメル・ママ=ティンパン・アレイ(松任谷正隆細野晴臣鈴木茂林立夫など)だっていうのも、カッコよさの一因だと思う。70年代前半にこの人たちが録音したレコードって、どれを聴いても「 ある程度は 」カッコいい。なんでだろう。上手い、とか、センスがいい、と言ってしまえばそれまでだけど、そういうんじゃなくて、もっと、具体的に記述する言葉が、何かないのだろうか。)
午前零時半過ぎ、ゆるやかに長くつづく坂道をチャリンコで下ってゆく。街灯に照らされている放置された自転車。道が、一度平らになって、また下る。路上に駐車している車のランプが点滅している。通り過ぎざまに見ると、なかに誰も乗っていない。月が真上に出てる。ブロック敷きの地面でチャリがガタガタ揺れる。後ろから光が近づいてきて、車に追い抜かれた。車のライトで白い花が暗闇から浮かび上がった。なんて名前かは知らない。