7/13(木)

何か身近にあるはずのものをなくしてしまい、必死に探すのだけれど見つからず、一体どうしたのだろうと思いながらも、さらに探しているうち、はたと、そういえば自分はまだそのものを手に入れてはいなかったのだ、と思い至り、なんだそれなら見つからなくて当然ではないか、と納得したところで目が覚めた。

咽がカラカラだったので、流しでコップ一杯の水をゴクゴクと流し込んだら、どっと汗が吹き出し、その汗に惹き付けられたのか、汗が出たとたんに腕や首筋や顔にまで蚊に刺されてしまった。蚊に刺されたこところがみるみる赤く膨らんでゆく。

林檎の表面をタオルでゴシゴシ擦るとテカテカとした光沢が現れ、甘い匂いも漂ってくる。林檎を齧りモシャモシャ噛んでいると口内でパサパサした皮とシャリシャリした果肉が次第に混じり合って、テレビのスイッチを入れると今日のニュースが次々と流れ出てくる。芯だけを残した、既に僅かに黒ずみはじめている林檎の成れの果てをゴミ箱に捨てて、汗でぐっしょり濡れたTシャツを脱ぎ捨てて、流しの水で顔を洗い、髪を洗い、歯を磨いて、ようやく多少頭が働くようになる。

一面に薄く雲に覆われていて白い空は光を乱反射していて眩しくて見上げていられないくらい。道沿いにずっとつづいている並木の緑の葉がぴくりとも動かずに静止しているほど風がない。日向も日陰も同じくらいに蒸しあつい。もくもくと湧き出てくる泡のように生い茂る濃い緑の雑草のなかにも、まるで炎であぶられて焼けてしまったかのように枯れているものが混じっていた。