濃い色の空。冷たい空気。乾燥する唇。小鳥が地面に落ちた木の実を鋭く尖った嘴でつついている。霜のために、もこもこ盛り上がってしまった地面。緑地のなかにある池の、水かさが、かなり減っている。ドローイングに使うための木の枝をひろう。これは、モチーフにするのではなく、これで描くのだった。葉は、濃い緑色なのだけど、枝と葉の間にすこしだけ覗く茎の部分が、鮮やかに赤い木があった。葉は、上に向かって生えているのではなく、バナナの房のようにして、何枚か重なって束になって垂れている。どんぐりを拾って、齧ってみると、青臭かった。
コンクリートの壁に、濡れたままのモップが立て掛けてあって、モップの水分が壁に染みて、丸いかたちの跡がついてしまっている。
ドローイングを、わざわざ拾ってきた枝などを使って描くのは、別にナチュラリズムとかエコロジーとかとは、何の関係もない。自然なんて全然信用していない。ただ、描きづらい描画材料で描くため。規格外の、変に曲がったり捩じれたりしていて、先端もきれいに揃っていない『筆』を使うことで、自分の『描く身体』に、常にある種の刺激というか、違和感を与えつづけながら、作業をするため。自分の『手癖』に対して、いつも意識的であろうとするため。
あと、単純に、筆とかペンとかに触っているより、木の枝に触っていた方が気持ちがいい、という幼児的なフェティシズムってのもあるかもしれない。支持体としての紙なんかにしても、ぼくは和紙のような、繊細で洗練されたものは苦手で、もっとごつごつとしていて、物質的な抵抗感の強い、不器用な感じのする洋紙の方が、触りがいがあって好きだ。
カン・テイファンのライヴ情報が届く。カン・テイファンのソロではなくて、高田みどりプレゼンツによる、『トン・クラミ』というグループ名義の演奏らしい。カン・テイファンのほか、佐藤允彦(p)、高田みどり(perc)によるグループ。
日時:3月3日 (開場 18:30、開演 19:00)
場所:JTアートホール〈アフィニス〉
問い合わせ:チケットぴあ (03ー5237ー9990)
「アフィニス」は虎ノ門JTビルにある200席程度の室内楽用のホールだそうです。お時間のある方は、是非。