今日は、早起き。朝から、雨。
久々の湿った空気。電車の窓から見える、湿った工事現場。濡れそぼる黄色いショベルカー。傘から垂れる水滴で、床に水が溜まる。冷たい雨。
斜め上へと開くトイレの窓の、窓枠に溜まった水。ぽつん、ぽつん、と、上から落ちてくる水滴で、その水が跳ねあがる。
狭い道の両側に、車がびっしりと停めてあって、それに邪魔され、立ち往生している汚水くみ取り車。エンジンがうなりをあげ、フロントグラスに3本ついているワイパーだけが、しゃかしゃかしゃかと、軽快に動いている。
道路上に、油のようなものが点々と落ちていて、それが雨水に流されて拡がり、玉虫色に光を反射させている。かなり臭う。
低いところに溜まっている水。10トン以上ある大型トラックがそこを通り、びしゃーっ、と、大きな水しぶきをたてる。
『ピーッピーッピーッ、バックします。ピーッピーッピーッ、バックします。』電気的な合成音。
木の葉の窪みに水が溜まる。木の幹が濡れる。土に水が染みる。
湿ったアスファルトと、その上を走る車の、湿ったゴムのタイヤとの、噛み合わせ。車のボディーに、小さな水滴がびっしりと貼り付いている。
黄土色に枯れた植物の色が、いつもよりも濃く見える。
新しいビニール傘の、粉っぽい匂い。濡れた靴下が、足から熱を奪う。
空は雲に覆われて真っ白なのに、ビルのガラス面に映っている空は、少しだけ青い。
午後4時前に、雨はあがる。
西の地平線ちかくの雲が、水平に切れて、そこから光が帯のように横長に拡がっている。光の帯のは、だんだんに拡がって太くなり、光の色も、だんだんオレンジがかってくる。雲の裂け目は、斜め上にも伸びて、ブルーグレーの空が覗く。
アスファルトに残された水たまりや、湿り気に、街灯の光が反射する。どこかから、蕎麦汁の匂いがしてくる。
夜おそく。誰も人がいないサッカー場に、夜間照明がこうこうとついている。湿った黒い土だけを照らす灯。林道の途中にぽつんとある街灯の下は、そこだけ妙に明るくて、枯れて水分がなくなり、くしゃくしゃになった葉の房が垂れ下がっているのが、暗闇から浮きあがっている。寒い夜は星が沢山見える。湿った土が、靴の裏にこびり着く。
夜中に、ジョアン・ジルベルトを聴く。