午前中のつよい春の日射し

午前中のつよい春の日射し。近所の、大きな庭のある古い平家建ての家。その庭の真ん中あたりの物干しに布団が干してあって、あたたかい陽を受けて白く眩しい光を放っている。布団の表面には、庭に植えてある木の影が、布団にできた細かいシワにあわせて揺れたような形になって、くっきりと落ちている。重みで軽くしなっている物干し竿。奥に、二台並べて置いてある自転車の金属部分が、庭のなかでそこだけがシャープな感じで、キラキラ輝いている。その脇に、犬のいない犬小屋が、ホコリを被って無造作に放置してある。門から玄関までつづいている飛び石が、そのまわりの赤黒い土との対比で白々と浮き上がって見える。濃い緑の葉のなかに、埋もれるようにして咲いている、ツバキの花の赤。いくつかの赤い塊。内側に巻き込んでゆくような花びら。その家は、引き戸が気持ちよく開けっ放しにしてあるので、表の通りからも家の中が丸見えだ。乾いていて陽の匂いのする風が、家のなかを通り抜けてゆくのだろう。