ある日、風邪をひく

5月とは思えない寒い夜。駅からバスターミナルを越えてゆく立体的な歩道を通って歩いてゆく。銀行の建物の裏側の細い道、しばらくずっと壁が続いているところに、その壁の無表情さを隠すために、小さくて細長いディスプレイ用のショーウインドウがあるのだが、模様替えのためなのか、それともガラスが破壊されたのか、そのガラスの表面がすっぽりと青いビニールシートで被われていた。それでも、ショーウインドウ内部の照明はつけっぱなしのままで、薄暗い細い道に、ビニールシートを通ってその内側から染み出してくる青くて細長い長方形の光が、ぼうっと浮かんでいるのだった。ここ数日で多発している暴力的な事件の報道の影響なのか、その場所に溜まっているような青い光が、何かヤバいものを引き寄せるような光であるようにも見えてしまうのだった。