治りかけていると思っていた風邪が案外しぶとい。予定をキャンセルして昼間は寝ていることにした。呼吸をするたびに、肺のあたりに妙な引っ掛かりがあって、ぜいぜいする。しかし、この「ぜいぜいする」という言葉は、風邪の症状をあらわすときに一般的に使われている言葉なのだろうか。子供の頃、風邪をひいて実家の近くにあった掛かり付けの病院へ行くと、犬のような顔をした東北訛りのある医者が、聴診器の先の冷たい金属部分をぼくの胸にあてながら、「ああ、少し、ぜいぜいしてますね」と言っていたので記憶している言葉なのだか、よく考えてみれば、それ以外の場所で聞いた記憶がないし、ぼく自身も使った憶えがないのだった。関係ないけど、ドクターペッパーの味は、子供の頃その病院でもらった、シロップ状の甘い風邪薬の味にそっくりだ。汚い話で申し訳ないのだが、いままでサラサラと流れていたハナミズが、ネバネバと粘つく感じになり、タンが喉の奥に絡むようになると、もう風邪も末期の症状で、もうしばらくすると治るだろう。ぜいぜいする感じというのは、子供の頃は風の初期症状だった気がするのだが、今では、ぜいぜいと咳とが風邪の最末期に出てくる症状で、これが結構しつこく残るのだった。最近では、年齢のせいなのか、風邪の症状が一遍に襲ってくるのではなくて、バラバラになって時間差でやってくるような感じになった。