ある日の会話

よく晴れておだやかだった空に、いつの間にかどんよりとした雲がかかって光を遮り、風がザザーッと渡ってきて木の葉を鳴らす。「嫌な雲が出てきたねえ」「なんか、降りそうですよね。」「昨日みたいになるのかねえ、昨日はひどかったからねえ」「いや、このへんはそんなには降らなかったんですよ」「あ、そう、そうなの、西の方は明るかったからねえ、向こうは凄かったよ、車走らせんのに、ライトつけなきゃなんないくらいだから」「そんなに降ったんですか」「いやあ、凄かったねえ、驚いたねえ、今日もまた降るのかねえ」湿った風が次から次へと吹きつけ、木の枝がうねるように揺れる。植え込みのところでガサガサ音がするので目をやると、かなり太くて長い蛇が、身体をくねくねくねらせながらスルスルと薮の奥の方へ消えてゆく後ろ姿(?)が見えた。そのすぐ後にS君と会ったのだが、S君は縄のようなものを手に持って振り回していて、近づいてよく見ると、それは青大将だった。「なに振り回してんの、蛇がかわいそうじゃん」「こうやってないと噛まれちゃうんですよ、ほら、さっき捕まえようとして噛まれちゃいましたよ」と、右手を見せる。「何も、そんなにまでして捕まえなくても...昼飯にでもする気?」「みんなに見せようと思って、見せたら離してやりますよ」「尻尾の方じゃなくて頭を持たないと、だから噛まれちゃうんだよ」そう言えばS君は、去年の今頃も蛇を捕まえて写真に撮っていた。このあたりはまだ雨になっていないけど、東の方向から走ってくる車の車体には、細かい水滴がついている。Kさんに「さっき、蛇見ましたよ、青大将と、あとあれは確かヤマカガシだったですかねえ」と言ったら、「ああ、そう、じゃあ今日はきっと何かいいことあるね」と言われた。