01/6/19(火)

帰り、まだ音がつづいているので、雨が降っているとばかり思って傘をさすのだが、もう雨は止んでいて、ずっと持続して聞こえていたのは、アトリエの前の道路から斜面を下った谷底(と言うほど大げさなものではないが)に流れている川の音だった。やや水嵩の増した川の流れの音が、いつの間にか耳のなかで雨音と入れ替わっていたのだった。やけに濃いもやがかかっていて、ふたつの小さな山に挟まれた狭い住宅地が、白い霧状の水粒に覆われている。小さな山の斜面の道を下ってゆく。もやで視界がきかず、街灯のオレンジの光が滲んでいる。強い水のにおい。湿度が高いのに、不思議に重くはない空気。駅までの道の途中の住宅の切れ目に、鬱蒼と葉をつけた巨木が1本あって、なぜかそこだけ周囲と比べて一際明るく強い光の街灯が設置されているのだが、その、街灯の光に浮かび上がって立つ巨木の下を通りかかると、どう聞いても蝉の鳴き声としか思えない、ギーギーいう虫の声がかなり派手に、場違いな感じで響いていた。間違えて土中から出てきてしまったのだろうか。それとももうそんな時期なのか。