あついあついあつい

あっつい。自分の身長ほどもある木枠と巻いた画布とを両手で抱えて乗っている電車の窓から見えた川原は、そこに生えている草の色の濃さも、そこに射している光の濃さも、もうすっかり夏のもののようだった。水面に日の光が反射して、一瞬ぎらりと光った。

電車のなかで、坊主頭の運動部らしい中学生が、おそらく日々の練習についての目標とか反省とかを書き込むようなノートだと思うけど、そのノートに熱心に何か書き込んでいた。ちらっと覗いても細かい文字は見えないのだが、赤い文字で大きく「正直者は馬鹿をみない!」と書いてあるのが見えてしまった。その文字の幼いバランスの悪さが、ちょっと感動的ではあった。

西日がモロにあたるアトリエはとんでもない暑さで、制作していると、まるで冗談のように汗が吹き出してポタポタと滴る。拭っても拭っても滴りつづける。とても、「採光の良いアトリエ」という訳にはいかないので、日の出ている時にはあまり制作はしないのだけど、この時期はなかなか暮れてくれないのだった。約3時間弱くらいで、500?のペットボトル3本分のミネラルウォーターを消費して、ほぼそれと同量の汗をかいた。(気がする。)もう日も暮れて涼しくなった帰り道、ひと汗かいて、まるで運動した後のようにすっきりした気分で駅までの坂を下っているのだった。