あついあついあつい

あまりに暑いので髪を切りにゆく。美容院は線路ぎわの建物の二階にある。イスに坐って待っている間に、窓から外を見下ろす。もう花はしおれかけてしまっている紫陽花だけど、葉は勢いよく溢れるほどにもくもくと茂っていて、線路のフェンスを埋もれさせてしまうほどだ。線路に沿ってまっすぐにのびる、強い日射しの道を、わずかに青みのかかったねずみ色の夏物の着物を着込んだお婆さんが、藍色の日傘をさしてゆっくりと歩いてゆく。ここ(室内)は冷房がよく効いている。左隣りでは女の子が、シャギーがどうした、レイヤーがどうした、内巻きカールがどうした、という話を美容師としている。正面には(当然だけど)大きな鏡があって自分の顔が写っている。(窓は右側に大きく開けている。)外から射すくっきりとした強い光に曝された自分の顔を、じっくりと見せつけられるのがどうにもいたたまれないので、読みたくもない雑誌に目を落とす。