あついあついあつい

桂の木の生えている辺りを通ると、蜜のように重たく粘つくような甘い匂いが香ってくるのだけど、実際に近づいて、その幹や葉の匂いを嗅いでも、まったくそんな匂いはしないのだった。(まるで、木の幹から樹液がじわじわと染み出すように、暑くて湿った空気の粒の内側から、甘い蜜の匂いがじとーっと沸き出してきているみたいだ。)木の下に落ちていた枝を一本、絵を描く道具にするために拾ってきた。その枝の樹皮を少しだけ剥がして、匂いを嗅いでみても、いわゆる「木の匂い」しかしない。