あついあついあつい

午後の最も暑い時間を冷房のキンキンに効いた建物のなかで過ごし、もう夕方という時刻になって出入り口のドアを押し開けると、外から尋常ならざる湿気を含んだ空気が「もわあ」と入り込んできて身体じゅうをみるみる包み込み、身体じゅうの表面がそのじとーっとした湿気と絡み合って結びついてぬるぬるとぬめり、身体が重くなったように感じられる。

どうやら、暑さをさっと洗い流すまでにはいかない半端な雨が降ったらしくて、地面が申し訳程度に濡れている。半端な雨は、空気中の水分濃度を一層増すことにしか貢献せず、地面を湿らせた水分が、熱を帯びてゆらゆらとゆらめきながら蒸発してゆく不可視であるはずの姿を、まるでそこここでぶつぶつと怨み事を呟きつづける地縛霊の集団の姿でもみるかのように、幻視してしまいかねないくらいの勢いで、ベタつく湿気にくらくらする。

半端な雨によって湿り気を帯びた、強い日射しでたっぷりと蓄熱したアスファルトの地面は、シャワーで落ちきらなかった髪についたプールの消毒液の匂いが、ふとしたきっかけで香ってくるような、捉え難いような匂いを、そこここで微かに立ち上げている。