ある日

蛍光色にさえ見えるほどだった黄緑色の勢いがやや弱まって、少量の黄土色を混ぜ込んだような色彩になってやわらかく拡がってる芝生。その芝生を取り囲むようにして立っている桂の木々。ハート型をした桂の葉も、黄緑色から黄土色、黄土色から赤味の強いオレンジ色へとゆるやかに目に染み込んでくるようなグラデーションをつくっている。なかに一本だけある、それについている葉のすべてが見事に赤く(カドミウム・レッド・オレンジ)染まった木が目立っている。木々から落ちた葉の暖色が、芝生のところどころに散らばっていて、その暖色との対比が、やわらかな黄緑色を活気づけている。桂の木々が発している、甘い蜜のような匂いには、ほんのわずかにツンとするような刺激的なものが混じっている。大勢の子供たちがはしゃいでいるようなカン高い声が、遠くから風に運ばれてくる。そのなかでひときわハッキリと聞こえる女の子の声が、「てゆうかぁー、てゆうかぁー、てゆうかぁー、てゆうかぁー」と語尾を上げたり下げたりしながら繰り返していた。