ある日

中庭にある卵型の小さな人工の池。深さが20センチほどしかないこの池には、晴れた日射しが当っていて、底に敷いてあるタイルの模様までが薄い水の透明な層を通過した光でくっきりと照らされて見えている。まわりに立っている木の葉が落ちて水面に浮かび、その葉っぱの影が明るく光の当っている水底に黒く濃く落ちていて、葉とその影が一定の距離を保ちながらもそろってゆっくり、グルグルと移動しているで、池の水が循環しているのが分るのだ。池のある中庭からまっすぐに伸びているけやき並木のある道は、タイル敷きの地面が隠れてしまうほどに赤や黄色やオレンジ色の落ち葉で覆われていて、冷たい風が吹くとそれらが一斉にザザーッと乾いた音をたてて舞い散るのだった。