02/02/28

●時間がないので、ちょっとだけ。アテネ・フランセ文化センターで、黒沢清『2001映画と旅』(15分)、阪本順治『新世界』(18分)、青山真治『すでに年老いた彼女のすべてについては語らぬために』(51分、全てビデオ)の3本立て。どれも、とても面白い。『花子さん』などでもそうなのだけど、黒沢清の短編は、ひとつひとつのショットの自律性が高くてショットとショットの関係がとても解放的な印象がある。悪く言えば、ひとつの作品としての凝縮力が弱いということなのだが、この、ひとつひとつのショットがそれぞれバラバラに自らを主張し、それらがゆるやかで解放的な関係で結ばれている、という感じにはとても興味がある。もっともこの作品は、多分、もともと旅行などで撮った映像をもとにして、作られているからというのもあるのだろうが。ある「邪悪な意志」が、世界じゅうに散種される話。阪本順治の作品は、通天閣を取り囲む「新世界」と呼ばれる地域を、流しのミック佐竹(原田芳雄)が練り歩く。実は彼は、ある保守系の代議士の秘書に頼まれて、難民を受け入れる地域として「新世界」が適当であるか調査しろとの依頼を受けている、らしい。しかしこの依頼自体が、ある種の世界の感触から導きだされたミック氏の妄想でないとは言い切れない。訳の分らない歌を歌う通天閣の職員が笑える。青山真治の作品は、中野重治が延々と朗読され(実は中野重治かどうか知らないのだけど、蓮實がそう書いているのだから、そうなのだろう)、そこに菅野すが子や夏目漱石か横切ってゆく「FUKEIシネマ」。空を飛ぶグライダー、高速道路、延々と映し出される水辺に浮かぶ青いボート、そして点滅する字幕、マーク・ボラン。これは無茶苦茶カッコイイ。個人的にはゴダールの『映画史』よりもカッコイイのじゃないかとさえ思う。ただ、ラスト近くなって、映画監督の肖像写真が出てきたりする展開は、やや無理矢理っぽい。3月2日までやっているので、興味のある方は是非。