●風が吹いて、イチョウの黄色い葉が。はらはら、はらはらと落ちつづけている。イチョウ並木のつづく国道は、車道も歩道もイチョウの黄色い葉で覆われ、車や人がそれを踏みつぶし、細かくなってアスファルトに貼り付き、その上からさらにまた葉が落ちる。イチョウの落ち葉にはまだ水分が残っていて、踏んでもパリパリッという乾いた音で砕けず、ふんにゃりとした感触が足裏から伝わってくる。
●昨日、学生の頃からもう10年くらい通っている美容院に行ったら、定休日でもないはずなのに灯りが消え、がらんとして誰もいなかった。特に貼り紙などもなかった。そう言えば最近いつ行っても空いていたしなあ、新しい店もいっぱいできてるし、潰れちゃったんだろうか、と思い、で、どこで髪を切ればいいかなあ、と思いつつ昨日はそのまま帰った。で、今日、前を通ったら普通に営業していて、しかもかなり混んでいた。こんなちょっとした事で、自分が昨日見たはずの「事実」が僅かに揺らいでしまう。確かに見たはずのあれは何だったのだろうか、と、自分の知覚の確実性が疑われる。昨日はどうしたんですか、と一言美容師に聞けば、そんな揺らぎは簡単に消えてしまうのだが。しかしだとしても、自分の知覚の確実性は、社会的な関係(他者の証言)によってしか保証されないということになる。