●毎日、少しずつ日が延びているという感じが、ここ数日で、暮れるのが遅くなっているという感じになった。つまり、「秋の日はつるべ落とし」の逆で、夕方(という状態)が少し長くつづくようになったと感じられるのだ。日が落ちてもすぐには暗くならずに、透明感を保ちながら徐々に濃くなってゆく空の青。その空の西の端だけがまだほんのり白く明るくて、既に沈んだ、隠れたところからの日の光に照らされて輝くひこうき雲が、ゆるやかな角度で斜めに空を横切って天に向かって昇っていた。そのひこうき雲を眺めながら歩いていると、微かにお茶を煎っているような匂いが鼻孔をかすめた。まあ、ちょうどお茶屋の前を通りかかったところだったのだから当然なのだけど。(でも既に店は閉まっていたのだから、この「匂い」が本当に実態に基づいたものなのかは怪しいのだった。)