●雨で湿って黒々としたアスファルトに、真っ赤なネオンの光が反射して、その赤い反射光が点滅し、それを自動車のタイアが踏みつけて、湿った道路とタイアが触れ合うチリチリという音をたてて通り過ぎてゆく。雑踏のなかで、建物の軒下で雨をよけて立ちながら、そんな光景をぼんやり眺めている時、ぼくは自分を構成している様々なしがらみ(自分の置かれている現状)を容易に忘れて、というか失って、空っぽになり、そしてそんな時こそ、自分が生きていて、存在していて、こういう光景を「見ている」ということの不可解さを感じ、その底が抜けたような感覚にくらくらするのだった。