『クレヨンしんちゃん モーレツ!嵐を呼ぶオトナ帝国の逆襲』(1)

●ひきつづき、藤田嗣治についての原稿を書いていた。なんとか、最後まで書けたので、一晩くらい寝かせてから、推敲しつつ、長さの調整をすればよいので、締め切りまでにはなんとかなりそう。
それでちょっと一安心したので、傑作だという評判の『クレヨンしんちゃん モーレツ!嵐を呼ぶオトナ帝国の逆襲』をビデオで観たのだけど、ぼくには面白くなかった。なんか、内実のない、紋切り型のお説教を聞かされたような感じだ。この映画の舞台であるカスカベには、小さい子供とその親という世代しか住んでいないというのはどうしたことだろうか。それ以外の存在が一切無視されているこの世界の狭さは、いつまでも結婚しないし子供もつくらないカップルは駄目で、ちゃんと結婚して家庭をつくるこそが大人の責任を果たすことだ、みたいなイデオロギーを何の疑問もなく当然の前提としているような空気とも繋がっていて、観ていてあまりいい気持ちはしない。カーチェイスや塔の上でのシーンに宮崎アニメ並みのクオリティを要求するのは酷だとしても、ノスタルジックな「匂い」の世界の構築が決定的に魅力を欠いていると思うし、子供たちだけになった時の遊戯的な世界の描写にも、魅力が感じられない。それに、21世紀を生きる、とか言っているのに、あんなベタなクライマックスはないと思う。(あのハトは、どう考えても駄目だと思うし、しんちゃんが塔の階段を駆け昇る長い描写にそれっぽい音楽が被るのも、安易な感じがする。)なにより、敵役であるイエスタデイ・ワンスモアの側のキャラクター造形が、まったく面白くない。あと、なんと言っても「絵」がつまらない。あの絵は、漫画(静止画)としてはアリだと思うけど、複雑な動きをさせるのにはちょっと無理があるように思う。