夢の話

●夢の話。高校の教室の南側はほぼ全面が窓になっていて、そこから海が見える。(実際にぼくが通っていた高校の教室からも海が見えた。)教室のなかにはほんの数人だけ生徒がいて、ぼくもそのなかの一人だ。外はよく晴れて、海は水色というよりも群青色のように濃い青で、荒れているらしくて、遠く沖の方でも白い波頭がいくつもたってる。太陽の光りが海面に当たって、眩しいくらいにきらきらしている。教室は軽く汗ばむくらいの暑さで、放課後というよりも、休日に何かの用事で登校してきて、用事は早々に済んでしまったという感じの開放感があり、ぼくはこっそりと鞄からビールを出して、海を見ながら飲む。(何故かビールはよく冷えている。)それを見た他の生徒は、お前なんだよそれ、と、笑いながら冗談めかしてとがめる。濃い青の海上には、かもめのような海鳥とは違う、真っ黒な鳥が何千羽と舞っている。ぼくはそれをカラスだろうと思っている。しかしよく見ると、それらは海上を飛んでいるのではなく、海に浮かんで漂っているようだ。鳥の群れは漂いながら、徐々に砂浜に近づいて来る。それは思ったよりも大きい鳥のようだ。あれってカラスじゃないよね。窓の外を指差して、ぼくはその場にいる生徒に聞く。カラスじゃないよ、多分ペンギンだろ、と誰かが答える。ああ、ペンギンか、そういえばそうだな。ぼくは納得する。しかしそのペンギンは、腹の部分も白くなくて、全身が真っ黒なのだった。
何千羽というペンギンの群れは、とうとう砂浜まで達し、次々と上陸してくる。ペンギンの真っ黒な羽根が海水で濡れて、強い光りでぬらぬら輝く質感までがはっきりと見える。それはかなり大型の動物で、真っ黒なウエットスーツの上から真っ黒なマントを被った全身ずぶ濡れの人間くらいの大きさで、妙に生々しい形をしている。それが何千羽と、つぎつぎに浜にあがってくる。しかしぼくは、ああ、やっぱりペンギンだったと納得しながら、ビールを飲んでいる。胸が軽くやけて、ゲップが出そうだ。ビールの味と香りを、夢のなかでもはっきりと感じている。(眠る前にかなりビールを飲んでいた。)暑いが湿気はなくて、とても気持ちのよい陽気だ。