打ち合わせと杉田かおる

●神楽坂で打ち合わせ。ほぼ二時間くらい、話はずっと平行線だったように思うけど、相手方のある指摘をきっかけに、なるほどとすんなり納得がゆく。人とは話してみるものだ、と、あたりまえのことを改めて思う。
考えてみれば、自分が書いたものについて、人とこんなに長く突っ込んだ話をしたのははじめてではないかと思う。それが出来たということがとても貴重なことだった。
●テレビをつけたら、芸能人に、あなたは誰を天才だと思うか、と聞いて回る番組をやっていた。たいてい、イチローだとか松本人志だとか桑田圭祐だとかいう(妥当ではあるが)ありがちな答えだったのだけど、杉田かおるの「大江健三郎」という答えが印象的だった。杉田かおるは以前別の番組で、「安倍首相もそうなんだけど、わたし、カメラ目線の人ってどうしても信用できないのよねえ」という印象的な発言もあった。
(イチロー松本人志や桑田圭祐が天才だということに別に異論はないけど、そのような答えには、バラエティ番組内での答えだという「場の空気」があらかじめ織り込まれている。確かにその通りなのだろうけど、そのような答えばかりではあまりに世界が狭過ぎるとも感じられる。おそらく、大江健三郎という(ある意味で権威主義的ともとれる)答えは、バラエティ内では最も「使えない」(視聴者が「引き」かねない)答えなはずで、それをさらっと言えて、しかもカットされないというところに、杉田かおるという存在に独自の、ちょっとしたパフォーマンスの「厚み」のようなものを感じる。(テレビ内で「知的」という役割をわりあてられている人が大江と答えても、「ああ、この人はそういう人ね」としか受け取られないだろう。)「カメラ目線」発言にしても、ここで安倍首相が持ち出されるのは、昔風の(山城新伍みたいな、爆笑問題みたいな)「偉い人を風刺する(ことで大衆におもねる)」みたいなことではなく(勿論、討論番組やニュースのコメンテーターがするような生真面目な安倍批判でもなく)、たんに、いかにも「信用出来なさそうな人」の例として挙げられている所に見識を感じる。)