08/02/22

●食器を洗っていて、洗剤を出そうと容器の腹の部分を指で押すのだがなかなか出なくて、空気ばかりがヒュッと出て、それを何度か繰り返すうちに世界が切り替わり、意識が浮上し、今、自分は横になって眠っているのだということを自覚する。その時、手は軽く容器を押すような動きをしていた。この手の動きが目覚めの原因なのだろう。眠くて仕方がないのだけど深く眠れず、さっきから何度も浅い眠りの夢と目覚めとを繰り返していたのだということを、この時に改めて思い出す。寝返りをうち、眠ろうと努める。
エスカレーターの上に立っていた。昇りだった。次の階につき、切り返してさらに昇る。それを何度も繰り返す。そのうちに、すぐ後ろに知り合いがいることに気づき、振り返って話をする。その間にもエスカレーターは上昇している。その上昇の速度と滑らかにつながるように、また意識が横たわる自分に戻って来る。後ろにいたはずの知り合いの不在をいぶかしく思いつつ、ああ、自分は今眠ろうとしているところなのだと思い出す。枕の位置を少しだけ動かし、寝返りをうつ。
金網があり、そこに大勢の人が集まっている。どうやら金網の向こう側はグランドになっていて、スポーツの試合が行われているようだった。人が多すぎて、向こう側の様子は分からない。人の切れ間を探して、金網に沿って歩いて行く。喚声が湧く。しばらくして声をかけられて振り返ると、通路の後ろ側にある高くなった塀の上におっさんがいて、兄ちゃん、ここからならよく見えるぞと言っている。そちらへ行こうとして身体の向きを換え、その歩いてゆくスピードで意識が浮上して、横になった自分へと戻って来た。ああ、またこっちか、と思い、さっきから一体何度これを繰り返しているのかと思う。寝返りをうつ。
地元の博物館のような場所で、展示を見ている。詳しく見ようと近づくと警報ブザーが鳴るので、あわてて離れる。他の展示物でも、少しでも近づこうとするとブザーが鳴る。これじゃあ全然見られないじゃないかと軽く苛立ち、展示室を抜けて外に出たところで、知らない顔の女性に声をかけられる。この人、誰だっただろうかと思い出そうとするのだが、全く心当たりがない。ぼくのことを先生と呼ぶので、おそらく教育実習に行った時に担当した生徒の一人なのだろうとアタリをつけ、差し障りのないような受け答えをする。中庭にはテーブルとベンチがいくつも設置され、そこにはその女性の夫と子供、その友人の家族もいるようだった。(声をかけられた時は制服を着た学生だったような気もするのだが。)その人たちに挨拶する。女性とその友人は、お互いのブーツを誉め合っている。自分がなぜここにいるのか、ここにいていいのかと居心地の悪さを感じつつ、とても気持ちのよい天気で、気持ちのよい風が吹いてくるので、ベンチに座ったまま動く気持ちがなくなってしまう。その気持ちのよい空気のトーンがゆっくりと変化するように、こちら側へ戻って来る。
向こう側の夢の光景があまりに鮮やかでリアルなので、こちらへ戻って来た寝ぼけ頭の自分の存在の方が、よほどあやふやで、向こう側で見た切れ切れの世界こそが本物なんじゃないかと感じていた。しかし、いつまでこれを繰り返すのかと思った。