●雑誌の対談(インタビュー?)の用事で、八丁堀へ。そこから歩いて、日本橋のヒノギャラリーで、小林良一展。さらに歩いて、八重洲ブックセンターで、自分の書いた本が店頭に並んでいるところをはじめて見た。
●ヒノギャラリーの小林良一展。ここ何年かの小林さんの展示では、一番良いのではないかと思った。最近の仕事では、フレームと形態との関係がいまひとつしっくりいっていなかったり、色彩も、抑えようとしすぎていたり、あるいは逆に、飛ばし過ぎていたりする感じがあったように思うのだが、色彩や筆致をより屈託ない感じで展開することで、フレームとの関係もしっくりいくようになったのではないだろうかと思った。特に、黄緑のひろがりのなかに赤が散らばっている、一番大きな作品と、その正面にあった、割合荒々しい筆致が残っている、同様に赤い下地に黄緑のタッチがのっている作品が良いと思った。
小林さんの作品に独特な、湿って、画面としっくりと馴染みつつ広がり出すような、独特の絵具の質をともなった色彩のひろがりは、以前では、かなりじっくり、がっしりと塗り重ねられた絵具の層の重なりによってはじめて獲得されていたもののように思うのだが、今回の展示では、割合あっさりとした絵具の重なりや、割合ラフな筆致の重なりによっても、以前のがっしり塗り重ねられることで出来たのと同等の質が獲得されていて、その、あっさりとラフな感じが、色彩を、以前よりももっと軽やかで、よりいっそう生き生きとしたものにしているのではないだろうか。
21世紀のクリフォード・スティルである小林さん(この言い方ははたして褒め言葉になっているのだろうか?)の作品は、その堅牢な絵具の構築性を保ったままで、色彩がより軽やかになっててゆくことで、今までとは少し違った、新たな領域に入りつつあるのではないかと思った。いや、本当にとても良かったです。
●28日と29日、「組立」展の最後の2日間、ぼくは会場にいる予定です。