●昨日、永瀬さんのブログを読むまで、川村記念美術館でモーリス・ルイス展をやっているなんて、まったく知らなかった(http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/index.html)。もしこれを見逃したら、おそらくぼくが生きているうちには、日本では二度とルイスのまとまった展示などないんじゃないかとすら思う。そもそも今の日本でこんな展覧会が成立しいてしまうこと自体が信じ難い(ロスコ展なら、まだ分かるけど)。徹底的に現在の美術のトレンドを無視している。川村記念美術館すげーっ。ロバート・ライマン展を実現させ、ルイス展も実現させたのだから、是非ともつづいて、ブライス・マーデンとヘレン・フランケンサーラーのまとまった展示もお願いしたい。ただぼくが観たいだけだけど。美術史的には、ルイスよりもさらにマイナーな位置付になるのだろうけど、マジでお願いします。いや、とにかく、ルイス展をなるべくはやいうちに観に行きたい。棚からぼたもちというのは間違った使い方だが、ふいに降って湧いた奇蹟みたいな感じだ。
今のぼくの関心とはちょっとズレてしまっているけど、モーリス・ルイスは、学生の時に最も好きだった画家の一人で、色彩を純粋に快楽に奉仕させることの出来る、というか、絵画において、色彩を快楽だけに奉仕させる究極の形態をつくった画家だと思う。観ていると、「色を知覚している」ことが自分の全てとなり、身体が消え、絵を観ている目すらもが消えてしまうかのような感覚になる。色とは波動であり、色を知覚することはその波動と共振することで、ルイスの絵を観ると、色を観ることがそのまま、ほとんどオカルト的な経験に近い感じさえに思えてくる(色を観ることと、幽霊を見ることは、その直覚性と、再帰的に捉え直すことの困難さにおいて、とても似ている)。今のぼくにとっては、あまりに純粋でブレのないルイスより、もっと不純な要素が含まれ、濁りやブレを含んでふらふらしてもいるフランケンサーラーの方が面白いし、興味もあるのだが、しかし「好き」という次元ではもう圧倒的に好きで、川村記念美術館に行く度に、どんな展覧会の時でも、結局、その前にもっとも長く留まる作品は、ルイスの作品なのだった(この美術館にはとても充実したルイスのコレクションもあるのだった)。