●散歩から戻ると、目の奥がヤスリで擦られるように痛く、鼻の奥は、沢山の細かい針で刺されているようにジンジンする。駅前で配っているのをもらったポケットティッシュがすぐになくなる。それでも、あの立体型のマスクをする気にはどうしてもなれない。顔につけるものは眼鏡すら鬱陶しくて、絵を描くときにしかかけない。普段の視力は、駅で路線図や料金表がかろうじて見えるくらい。四メートルも離れると人の顔も識別出来なくなるので、挨拶しなくても無視しているわけではないです。目が合っていても、誰だか分かっていないことも多い。映画館では、前の方に座らないと字幕が怪しい。眼鏡すら鬱陶しいと言うけど、お前のその髪の方がよっぽど鬱陶しい、と突っ込まれる気もする。髪型に関しては、外側からの規定もなく、独自のポリシーも美学もビジョンもないので、考えるのが面倒で、どうしたらよいのかさっぱり分からず、いい加減に放置してある状態。手入れの行き届いていない庭とか、散らかりっぱなしの部屋のようなもの。外に出る時には、とりあえず帽子で誤摩化して体裁をととのえる。きっと誤摩化し切れていないと思うけど。部屋に人が急に訪ねてきた時、散らかっているものを急いで押し入れに突っ込んで誤摩化すけど、微妙に見られたくないものが座布団の下から出てくる、みたいな誤摩化し切れなさ。エロ本とかだとまだ愛嬌があるけど、何か微妙に引いてしまう「えーっ」みたいなものが。