●ノックの音で起こされる。青土社から「ユリイカ」、福永さんからミトゲーの雑誌「WALK」の日記特集号(雑誌の全てがいろんな人の日記で埋められている)、学燈社から校正刷り、が届く。早速、それを持って、喫茶店へ行って延々とゲラの直し。外は強い雨。小説家Aの新作論、約35枚。舌足らずなところがいくつかあり、言い回しをけっこう直す。しかし、基本的な変更は無し。面白いはず。
合間に、「WALK」の福永さんの日記を読む。《「アクロバット」タテ版について説明する。須藤さんは「タテにどんどん一行を読んでいく」と思ったそうだ》。この記述を読んで、映画のフィルムのような、ひたすら細長い紙に、一行が延々と続いていて、それがフィルムのリールのようなものに巻き付けられている状態で売っている本を思い浮かべた。それはきっと、読む時も、フィルムの映写機のような装置を使って、もう一つの別のリールに巻き付けてゆきながら読むことになるだろう。映写機というより、八ミリ映画の編集の確認の時に使う装置のような専用の器具(糸巻きのような器具)を使って、つまみを持って、手動でくるくる巻いたり戻したりしながら読むことになるだろう(フィルムの編集をしたことのある人なら、この感覚がよく分かると思う)。そして、そのフィルム状の紙を、改行するのに適当な長さで切って、ノートに順番に貼付ければ、自作の本となり、普通の本のように読むことも出来る。貼ってゆくうちに、順番を間違ったり、あるいは意図的に前後を入れ替えたりも出来る。自分で描いた挿絵を付け足したりも。これは、一本に繋げてゆくフィルムの編集とは逆向きの作業だが、その行為こそが、それぞれの読者による「編集-モンタージュ」となるだろう(『アクロバット前夜』の新装版は、そういう形で出るわけではありません、念のため)。
コーヒーとハムトーストの注文だけで、喫茶店閉店時間ギリギリまで粘る。帰りには雨はほとんどやんでいた。立ち寄ったスーパーのお惣菜コーナーにあった「やまいもの磯辺揚げ」が半額になっていたので、買って帰って食べた。