●カラスは写真を撮られるのがわかるのだろうか。ぼくはカラスがすごく好きで、カラスがいると目が釘付けになってしまう。その黒のうつくしさ。とまっている時のフォルムのシャープさ。飛び立とうとする時の、予想外の羽根の大きさとひろがり。滑空する姿のかっこよさ。カラスにはいろいろ酷い目にもあわされているのだが、それでも嫌いにはなれない。地面の上にいたり、それほど高くない(割合に近い)位置にいたりすると、デジカメをかまえて近付く。カメラを構え、ゆっくりと近付き、ディスプレイの中にカラスが一定の大きさを占めたことを確認し、ピントを合わせるためにシャッターを半押しにする。ここまでは、カラスは動かない。というか、こちらのことなど関心がないかのようだ。しかし、「よし」と思ってシャッターを切ろうとすると、その瞬間に、そのほんの一歩手前に、かならず飛び立ってしまい、結果として、撮られた画面を確認すると、フレームの隅にブレた黒い塊が映っている、という状態になる。カメラを構えるだけだとこちらのことを無視しているのに、いつも必ず、シャッターを切ろうとするその瞬間に逃れようとするのだ。これは何故なのか。「よし」と思った瞬間に思わず力が入ってしまう、その時の、こちらの気合いというか、筋肉のこわばりのようなものを感知するのだろうか。まあ、ぼくはこれに限らず何にしても、「よし」と思って「決め」にかかると、ほとんど必ず「外し」てしまうので、そういう「力み」がだだ洩れで周りにバレバレなのかもしれないのだが。