●昨日から読み始めた小説のつづき。この小説の終盤、分量で言うと最後の四分の一か五分の一くらいの展開に惹きこまれて(読むのは4回目くらいなのだが)、余裕なく、余白に絵を描くどころか、傍線の一本さえも引くことが出来なかった。途中で立ち止まれるような隙がない。その直前辺りで、やや緩んだ(ちょっと「書き癖」が目立つ)感じを感じていただけに、終盤の押し返しに圧倒された。手も脚も出なかった。この、「速く」て「捩じれ」た動きの軌道をどうやったら捉えられるのか。今日のところは完全にぼくの負けだ。明日、あらためて同じところを読み直して、攻め込み得るポイントを探す。この作家の小説には、一本のくっきりとした動線があり、まずその動線の軌道を掴む必要があるのだが、それだけでなく、その動線のなかには、別の点へと短絡的に繋がっている無数のワープポイントが仕掛けられていて、そのポイント間の関係のネットワークも同時に捉えられなくてはならないのだ。
この作家の小説では、まったく関係のない事柄の間にふいに関係性が予感され(〜と思えてならない)、その勝手に妄想された関係性が、一気に倫理や世界の法則にまで高められてしまうのだが(宇宙人好き系)、そこで見出された倫理や法則は、一方で、厳しく、厳格で、崇高なものなのだが、もう一方で、きわめて胡散臭くて、うすっぺらで、信用ならない。胡散臭く思えたものが、崇高なものへとふいに反転し、崇高にみえるものが、胡散臭いものへと一気に反転する。これもまた、固定されたものとしては捉えられない。