●『エヴァ』の旧劇場版、「Air/まごころを、君に」を観直す。思っていた以上に陰惨な作品。内容が、というだけでなく、作品のいたるところが歪んでいる。だいたい、登場人物の顔や体型がへんに歪んでいる。なんでこんなに歪んでいるのか。ゲンドウの、顔の前で両手を組んでいるあの「決め」の姿勢がへんだし、冬月の顔がテレビ版と全然違う。尖り過ぎ。シンジの顔もかなり気持ち悪い感じ。過剰に、顔の影を強調しているのも、センスが悪い。まず、絵の次元ですごく違和感がある。
内容的にも、父の機能を失った母性的な空間内で、ひたすらにお互いを殺し合う様が延々と展開されていて(まさにラカン理論の通俗的な図解みたいだ)、ただうんざりするしかない。しかも、オリジナル版にあらたに付け加えられるものは、ほぼ何もない。混乱を増大させているだけ。出口もない。作品として評価できるようなものではない。アスカの陥った、「みんな大嫌い、でも、そんな私が一番嫌い」という隘路に作品全体が陥ってしまっているかのようだ。ただ、あらゆるものに対する嫌悪の感情だけが作品を支えているようだ。人に「冷や水を浴びせる」ことだけにすべてが賭けられている。製作者たちに『エヴァ』という作品に愛着があるのなら(ないはずはないのだが)、そりゃあ、このまま終らせるわけにはいかないだろうなあ、と思った。この呪いは、なんとかして解かねばならない、と思うのも当然だろうと思った。
●今日から急遽、完全に原稿書きモードになる。一週間強くらいで、二つの原稿、あわせて七十枚くらい書く(つもり)。一つは、締め切りが前から決まっていて、ちゃんとやるけど、もう一つは、急遽前倒しになって、いけるかどうか分からないけど、とりあえず走ってみる、という感じ。勿論、前々からちゃんと準備しているものだが、ぼくの場合、準備といっても、頭のなかにできるだけたくさんのものを詰め込んでキープし、そのそれぞれに自然に繋がりが生まれるように頭のなかに転がしたまま、寝かせておくというだけだから、それらがちゃんと理屈が通ったものとして繋がって出てきてくれるのかどうかは、書いてみなくちゃ分からない。とりあえず今日は、一方の原稿の書き出しを十枚分くらい書いた。
●問題なのは、使っているノートパソコンがボロボロなので、怖くて外には持ち出せず(バッテリーもすぐ切れちゃうし)、冷房の効いた喫茶店ではなく、灼熱の自室で汗だくになって書かなければならないということ(扇風機さえないんだ!)。一万円弱くらいで買えるなら無理してもポメラでも買おうかと思ったのだが、二万以上するので手が出ない。