地震が恐かった。たいした揺れではない段階で目覚めたからよかったけど、ぐっすり眠っていたら、きっと上から落下してきた本で怪我をした。『存在論的、郵便的』とか『隠喩としての建築』とか、ハードカヴァーのわりと重ための本が、寝ている頭の位置くらいにドサドサッと落ちた。これが『千のプラトー』とか『ミシェル・レリス日記』とか『精神現象学』とかだったらと思うとゾッとする(さすがに、殺人的な重さの画集とかはそんなに高いところには置いてないけど)。前々からここで寝るのは怖いと思ってはいたのだが、寝る場所を変えるにしても他にスペースがない。寝袋でも買って、アトリエの方で寝るべきかも。
●きれいに晴れるというわけにはいかなかったが、久々に太陽を見た。空は濁っていて、地上は変にギラついているのだが。ここのところずっと、雨ではない時も太陽は白かった。厚い雲を通してしか太陽が見えてなかった。それよりはマシ。二機のヘリコプターが飛んでいた。場所によって、日が当たるところでは金属的にギラギラして眼に刺さり、日の当たらないところではグレーのシルエットになって沈む。びっしりと茂ったトウモロコシ畑に風が渡って葉を揺らす。名前は知らないけど、いろんなところに咲いている白い花。熱帯風の、オレンジに近い赤い花。サルスベリの紫がかったピンクの花。空き地に捨てられた自転車が、伸び放題の草に埋もれている。面積の半分ちかくが錆びで覆われた黄色い道路標識(大小ふたりの子供のシルエット---通学路?)。庭に植えられた植物のシルエットが、クリーム色の家の外壁にくっきり影として落ちている。誰もいない中学のテニスコートには打ち水がしてあって、それが少し乾いて、斑状に土の茶色が湿った濃い色になっている。格子状の金網の水色越しに、それを見る。波打ったトタン板で出来た物置小屋の脇に、用途の分からない「針金で出来た丸いもの」がひっかけられ、ぶら下がっていた。
●頭痛は、昨日よりは少し楽。喫茶店の三百円のコーヒーと、マックの百二十円のコーヒーをはしごして、本を読んでいた。