●昨日の引っ越しの手伝いのダメージで、多くの時間を寝て過ごしながらも、締め切りが迫っている原稿の入り口をみつけるために、DVDを何本か観た。友人が、筋肉の疲労には鳥のもも肉とクエン酸の組み合わせが効くと言っていたので、鳥もも肉を買ってきて、塩こしょうをまぶして蒸して食べ、クエン酸入りのスポーツドリンクを飲む。気の利いた人なら、鶏肉に梅肉をあえたような料理をちゃちゃっと作ったりもするのだろうが、ぼくは、肉でも魚でも野菜でも、ただ蒸して、塩こしょうか、醤油をつけて食べるだけだ。貧乏なので基本的に外食しないし、コンビニ弁当などの弁当ものも食べないので、ぼくの食生活はレトルトや炭水化物系以外は、ほぼそれで全てで、そのことに対して大して不満があるわけでもない。うちにある調味料は、塩、こしょうと醤油だけで、味噌も砂糖もない。学生の頃は、はじめての一人暮らしの新鮮さもあって、かなり凝った料理をつくってみたりもしていたが、自分がそんなキャラではないことにすぐに気づいた。好き嫌いはなくなんでも食べるが、特にこれが食べたいということもない。食に興味がないわけでもなく、食欲がないわけでもなくて、食べているものはたいてい何でも「おいしい」と感じている。食べるものがありさえすれば幸福だ。たくさん食べられて、アルコールがあればさらに幸福だ。でも、歳のせいもあって脂っこいものはちょっと食べただけでお腹がいっぱいになって少ししか食べられないから、脂っこくない(そして安い)ものをたくさん食べたい。そんな食生活のなかで最近発見したのは、七味唐辛子の偉大さだ。百円くらいで買えて、それを振りかけただけで、目の前の風景がパッと変化するように彩りが加えられる。とはいえ、まさに目先がかわったというだけのことなのだが。
《「引込線」の利部志穂の作品は、展覧会のなかでは際立って面白かった、23日で終わってしまうけど、エルメス名和晃平は観て損はないんじゃないか》、というようなメールをいただいたのだが、23日に出かけるためには、明日中に原稿を仕上げ、23日の午前中にはゲラの直しを終わらせる必要があり、かなり厳しいなあ、と思った。