●久しぶりに天気が良かった。空が完全に冬の空の色になっていた。ずっと雨だったせいで空中のチリが流されたからなのか空気が澄んでいて、斜めから射す光に照らされて、ずっとまっすぐ伸びる道路を渡る時、ずっと先までがくっきり見える。遠くがぐっと近づいてきているように見える。遠くの山も近くに感じられる。高尾山に行ったら紅葉がきれいなんだろうなあと思う。でも、今日もアパートと喫茶店を往復しただけ。せめて川原まででも行ってみればよかった。
●夜遅く、喫茶店からの帰り、頭のなかで何度も「さーむーいー夜だーかーらー」という曲が繰り返し再生される。でも、そこしか知らない。「さーむーいー夜だーかーらー、ら、らーらら、らーらーららー(歌詞も分からない)」だけが繰り返される。
●好き嫌いとは関係なく、というかそもそも意識的に聴いたことすらないのだけど、街中にあって風景の一部として否応なく目に入ってくるマクドナルドやローソンの看板みたいにして記憶に刻まれて、それを聴くとその時代の空気のようなものが自動的に蘇ってくるのが、ぼくにとっては、九十年代は小室哲哉で、八十年代が来生たかおなのだった。まあ、ベタだけど。思い入れや、それと密接に結びついた特定の思い出などがまったくない分、あるいは「作品」としての興味を感じない分、ほとんどオートマチックに、空気の感触だけがやけに生々しく蘇る。空気の感触というか、その時の自分がどんな感じで存在していて、どんな感じで外気に触れていたのかというような感触。肌の感触というのか。