●たんたんと用事を進める。あと一息。用事をいったん中断して、夕方から、ブックファースト新宿店での、青山七恵×磯崎憲一郎トークイベントへ。会場でぼくの本を売ってくれるというのと、磯崎さんにちょっと個人的な用事があったので。
トークで印象に残ったのは、青山さんのスイスでの話。
スイスを旅行中、体調を崩して気持ちが悪かった。友人と電車に乗っていて、友人がサンドウィッチをつくってきてくれていて、気持ちが悪くて食べたくなかったのだが、せっかく作ってくれたので無理して食べた。窓から見えたスイスの山がとてもきれいだった。
その時、見えている風景がすごくきれいだという気持ちと、サンドウィッチがおいしいという気持ちと、気持ちが悪いという気持ちの三つが、どれも混じり合わず純粋なまま、三つ同時に、同じくらいいの強さで自分のなかにあった。それが今年で一番印象的な出来事だった。
普通、気持ちが悪いという(内側からくる)気分は、その時の意識全体を覆ってしまって、あらゆる物事をその気分のフィルターを通してしか感じられなくさせてしまうと思うのだが、風景のうつくしさと、サンドウィッチのおいしさという(外からくる)感覚の強さ、クリアーさがそれを押し返し、しかし気持ちの悪さが消えてしまうわけではなく、三つの感覚が同じ強さで同居する。それはかなりすごいことなんじゃないかと思う。すこし大げさな言い方するなら、三つの感覚が分離したまま同居することによって、世界のなかにわたしがいることと、わたしのなかに世界があることとが、同時に成立しているというか。