●夢が面白過ぎる。すごく鮮やかで、密度があって、空間がダイナミックで、展開が多様で、いくら寝ていても飽きないくらいだ。全部憶えていられないのが残念で仕方がない。『アバター』は観ていないけど、きっとぼくの夢の方が面白いと思う。一方、日常生活はあまりに単調でグレーなのだが(なにしろ、毎日喫茶店へ行って本を読んでいるだけなのだ)、これはこれで別のリアリティがある。この寒さ、駅までの緩い下り、軽自動車もすれ違えない細い脇道(近道)に入る、途中にある、一年中外に風鈴をつり下げている家の前を通る時にいつも聞こえる金属音、その向かいにいる吠える犬、塀と塀との隙間の奥には小さな神社(というか、小さな祠)があるらしいのだが、そこはどう見ても道とは言えず隙間なので、神社まで入ってゆく勇気がない(個人で所有する敷地かもしれないし)と、通るたびに思う、坂の途中で視界が開けるところでは、一駅隣の駅前に建設中の高層ビルが見える、坂を下ったところから、斜面にひしめくように建っている家々を見上げると、いつもセザンヌの絵を思い出す、坂を下りきってからしばらく行くと、アパートから一番近い自販機があるのだが、細長い形で、飲み物の種類が六種類しかない、毎朝大量の卵焼きを焼いてどこかへ出荷している店があるが、ぼくが通る時は既にシャッターが閉まっている、しばらく先に一階が小型の消防車の置かれるガレージになっている消防団の事務所があり(この辺りでは冬になると、夕方、子供達が集団で拍子木を打ち鳴り物を鳴らしながら「火の用心」と言って練り歩く)、すぐ先にお茶屋があり、突き当たりには、毎年盆踊りの会場となる広い駐車場がある。盆踊りや地域の催しがある時、このお茶屋さんは、店の前に子供のために無料のジュースを置いておく(ここら辺で、ようやく駅までの道のりの半分くらいだ)。