●『輪るピングドラム』四話目。
前回はカレー=排泄物、今回はスカンク=オナラを、ヒロインの一人(リンゴ)が思いっきり浴びせられるという、二話つづきのスカトロ的な展開。前回は他にも、(ヒマリが)牛乳飲み過ぎてゲップというのもあったし。身体的なノイズが意識される。ストーカーであり、排泄物で汚される(まさに汚れ役の)ヒロイン、リンゴは、前回はヒマリと汚れた衣装を交換し、今回はショウマと交換する。つまり「汚れ」を人に押し付ける人物でもある(自らの「汚れ」を認めない)。だがそのためか、自分にとっての王子様の役が、タブキからショウマにすり替えられて(キスの相手が交換されて)しまう。スカンクの放屁によってお姫様の位置からカエルへと脱落するりんご(彼女は、臭いのついた紫の「トリくん」Tシャツから、ショウマの黄緑色(カエル色)の上着に着替えている)、だからこそ、お姫様への復帰のための王子様のキスの相手もすり替えられる。
そういえば前回は、カレーの鍋がすり替えられる話だったし、今回は手作り弁当が取り換えられる(二話に、「男性は胃袋を掴め」という台詞があり、だからここには、食物-胃(内蔵)-排泄物という連鎖と、そのすり替え-抗争がある)。食べ物はこの作品で重要な意味をもつ。
リンゴが汚れを背負う一方、(今のところ)ヒマリは汚れを常に回避する。とはいえ、ヒマリは「ヒマリ/ペンギン頭」という二重性をもち、死という穢れをもつ。
●ヒマリが、天に昇り、天から降りてくる女であるのに対し、リンゴは水没し、水の底に沈んでゆく女であるという対称性(星のなかで眠るヒマリと、水のなかで眠るリンゴ、二人の部屋-眠りのあり様の違い)。
●一方に、タブキをめぐる二人の女性の争いがあり、もう一方に、カンバ(双子の兄)をめぐる三人の女性が新たな登場人物としてあらわれる。リンゴの同級生三人組はそこにどう絡むのか。話はますます、なまぐさい女性たちの「生存(恋愛・性愛)戦略」という色合いが濃くなってきた(リンゴのキャラは、誇張されているとはいえ、こういう女の子は普通にけっこういそうだ)。そのなかでただ、ショウマ(双子の弟)だけが、女性たちのなまぐさい「生存戦略」の網の目の外に位置する(女性たちの欲望の対象ではない)。それによって彼は黒子のように自在に活躍する(あるいは空転する)ことが許される。今のところ、ショウマは、準-ペンギン的存在。
幾原邦彦はやはり、男の子の話じゃなくて、女の子(の主体)の話がやりたいんじゃないか、と思った。そういう意味で、ひたすら「萌えキャラ」を生産しようとする多くのアニメの流れとは別の場所にいるように思われる(「魔法少女」というのも結局「萌え」の問題としか思えない、六話までしか観てないけど)。閉ざされた場に留め置かれ、近親相姦の匂いのするヒマリは零落した(学園の外に出た)アンシーで、男を必死で追いかけるリンゴは、零落した(物語終盤の)ウテナということになるのだろうか。とはいえ、ヒマリ-リンゴのペアがアンシーで、それに対するショウマがウテナということも言えるかも。ひたすら無自覚なタブキが超あやしいので、タブキこそがアキオ的な役回りだろうか。
(物語的にはまだ明らかにされていないが、おそらくヒマリは何かしらの根本的な「汚れ」を背負っていると思われ、その意味で、ショウマだけが唯一、汚れの外にいるという役回りではないか。)
まだまだ、どうなるかまったくわからないけど、学園の外にでた「ウテナ・アンシー」たちの物語となるんじゃないかという期待がある。
●動物たちがたくさん出てくる。一方にリアルな動物たち(猫、カラス、野鳥など)がいて、もう一方にキャラ化された動物たち(ぬいぐるみたち、遊具たち、ペンギンたち、幻想のなかのカエルやヘビや毛虫、そしてクマのロボット)がいる。今回、とても重要な役をするスカンク(キヨシくん)が、そのどちらでもなく、中間あたりに位置する感じなのが面白い(どちらかというとキャラ化寄り?)。放屁する肛門が強調されているのが印象的。今回のスカンクの登場で、前回のカレーのスカトロ的な意味が遡行的に強化される。
●3と2の間の緊張、あるいは抗争。2+1としての3、あるいは3−1としての2。そして、その2の間でのすり替え(交換)。野鳥観察の四人組は、要素の被ったふたつのペア(ふたつの1+1、タブキ+ユリ、タブキ+リンゴ)と、余計な+1(ショウマ)によって構成されていた。《1+『1》+1』+1。