●なぜかいきなり『魔の山』を読みだしてしまい、他に何もせずに一日ずっと読んでいた。一日で読み切れるものではないし、日がかわっても読み続けるかどうか分からない(たぶん読み続けないんじゃないだろうか…)けど、とにかく、一日は『魔の山』のなかにいた。
すばらしく面白いことが書かれているわけではないが、飽きるということもない文の連なりを、極度に集中して、というわけではないが、それなりの注意を払いつつ、丁寧に、ゆったりと読み続ける、そういう時間の持続。最近、こういう本の読み方をちょっと忘れていた気がする。
《そんなわけで、話し手はハンス・カストルプの話をあっというまに話しおわれないであろう。一週間の七日でもたりないだろうし、七ヵ月でも十分ではあるまい。もっともいいのは、話し手がこの話に巻き込まれているあいだに、地上の時間がどのくらい過ぎるかを、まえもって予定しないことである。まさか七年とはかかるまい!》