●自分のことを旅慣れていないなあとつくづく思うのだが、昨日は興奮して調子に乗って朝からずっと歩き通しで、しかも夕方から深夜一時過ぎまで飲んでいたので、今日は渡船で尾道の対岸の向島に渡っていろいろ散策しようと思っていたのに、朝起きたら、からだがだるくて、ぐいぐい歩くような気分になれなかった。旅慣れている人なら、一日一日のペースの配分などを考慮し、旅の間ちゃんと興奮が持続するようにするのだろうけど、いい歳なのに興奮したら突っ走ってしまって息切れてしまうのだった。とはいえ、とにかく宿を出て、荷物を駅のロッカーに預け、カフェに入ってアイスコーヒーを飲みながらぼーっとして、これからどうしようか考えていると、そのうち徐々に、また少しずつ気力が蘇ってきて、せっかくここまで来ているのだから、とにかく向島まで、渡るだけ渡ってみようと思えてきた。とにかく、現地まで行ってしまえば、その場所の力に引っ張られることになる。
●泊っていたのは、商店街のなかの閉店した店をリノベーションしてゲストハウスにしたという場所。「した」というか、今「している」。店舗だった部分は改築してカフェにするということで、今、その工事が行われている。その奥に、八畳の部屋が二部屋ずつ、一階と二階にそれぞれあって、そこがゲストハウスとして使われる部分だと思う(さらにその奥に中庭があり、もう一棟、離れのような建物まである、そんなに奥に深いとは表から見ると想像できない)。和室もまだ基本的に改装中で、ぼくはその二階の奥の部屋に泊らせてもらった。まだでき上がっていない施設のなかのとりあえず出来上がっている一部屋を(多分、美術館の関係者のコネで?)使わせてもらった感じだと思う。昼間は工事をしている人がいるが、夜は誰もいなくなる。二拍とも、深夜まで飲んでいたので戻るのは午前二時くらいで、まったく人気のなくなった商店街を歩いて帰り、その一角のシャッターに手をかけガラガラと引き上げて勝手に中に入り、工事中の店舗を足元に気をつけながら突っ切って、三和土で靴を脱いで誰もいない日本間に上がり、奥にある急な階段を上って二階の部屋に行く。改装中という隣の締め切りの和室を覗いてみたかったが、なんとなくためらわれた(夜中でもあるし)。古い和室の八畳間なので、畳八枚分の他、床の間もあり、中庭に向けて突き出すように板の間までついている。鴨居の部分に何やら彫り細工彫りがされている。トイレには、(昔のトイレにはついていた)空気を逃がすための小窓が便器のすぐ前についていて、これも懐かしい感じ。朝は、工事をする人たちの物音で目が覚める。
●昨日はずっと光が照り付けている感じだったが、今日は、日の光は強いけど雲も多く、光が劇的に変化していた。島に渡った頃には、晴れているのに遠くから雷の音がずっと響いていて、戻って、尾道駅から新尾道駅までのバスに乗る頃には雲が厚くなって、バスが新尾道に着く頃に雨が降り出した。窓口で切符を買ったら出発まで一時間くらいあって、新幹線が出る頃は、新幹線に遅れが出るくらいに(3、4分だけど)強い降りになっていた。