●軽井沢のセゾン現代美術館へ行って小林正人の展示を観た。セゾン現代美術館へ行くのはたぶん岡崎乾二郎展以来で十年ぶりくらい。ほぼ紅葉が終わりかけて人影も少なくどんより曇った軽井沢はとても渋い。じわっと冷える。帰りに雨の降りだした美術館庭園で猿の姿を見た(十年前にも見たかもしれない、見たような気がする、よく憶えていない)。高速で走る新幹線の窓に当たる雨粒の流れ方が面白くてずっと眺めてしまう。東京駅ではぼんやりしているとまだ中央線に乗ってしまいそうになる。東海道線は強風のために一時間くらい止まった。
十二年ぶりくらいで小林さんとお会いした。
●大きな刺激を受けたけど言葉がでない。「言葉にできない」ではなく「出ない」。混乱して何度かぐるぐる回った後に、夕方になって、ほとんど誰もいなくなってがらんとしたたった一人の展示室で長時間眺めていて(おそらく美術館全体でも三、四人くらいしかお客さんがいない状態になって、外の暗さも濃くなり足元も冷えてきて、キーンと静かに落ち着いたなかに、その数名のお客の気配や、受付の人の気配がざわめくのがかすかな物音とともに感じられるような時)、ようやく、頭がほぐれてくるような感じで、絵が少しずつ見えてきたように思う。