●深夜アニメ。『境界の彼方』は、話数を重ねるごとにどんどん好きになってゆく。『京騒戯画』が、最初にガツンと来て、ここ二話くらいは安定状態にある(それはそれで面白いけど)のに対し、「境界の…」は、一話ごとに確実に、じわじわとではあるが攻めてきている。毎回少しずつこちらの予想(期待)を上回る、というか。派手なバトルだった前回に比べて地味ではあるのだが、五話はかなり素晴らしかったのではないか。
細かいところだけど、異界士協会の人が自動車に乗って帰る場面で、エンジンをかける時の「自動車の震え」の描写に、これが日本のアニメの(線画の)すごいところなのだと感動した。そういう細かいところでいろいろ「おおっ」と思わせてくれる。色彩の配置も今回は特に良かったし(特に秋人と博臣の服のコンビネーション)、キャラクターの「手の動き」の演出の細かさもすばらしい。とにかく、演出の配慮がすごく細かい。そしてそれに表現(絵)がしっかりと応えている感じ。あと、ぼくは別にメガネフェチでもタイツフェチでないのだけど、このアニメのメガネとタイツの表現はすごいのではないか。『風立ちぬ』に匹敵するメガネ描写のクオリティ。アニメ的フェティシズム表現の完成度の高さ。「境界の…」を見てしまうと、他のアニメがちょっと粗く見えてしまう。
●『アウトブレイク・カンパニー』。けっこう楽しい。本当に下らない。最低だとさえ言える。でも、まだまだ下らなさが足りないと思う。今後も、中途半端ではなく、徹底して下らなくて最低な、オタクの欲望に都合よく奉仕するだけの、ただただだらしない展開をしてくれることを期待したい。『コッペリオン』は、面白くなりそうなのに、いちいち「安いドラマ」を挟んでくることで引いてしまう。ドラマが安いと主人公の関西弁までわざとらしく聞こえてしまう。『キルラキル』は、躊躇せずにやり切っているところはすごいと思うけど、同時になんておっさん臭いアニメなのかとも思ってしまう。(四話の)マコの家族の描き方とか、「パンチラ→鼻血ブー→壁に激突」パターンの(「分かってやってますよ」的な)繰り返しとか、そういうおっさん臭さは最初から感じてはいたけど、それがだんだん受け入れるのが難しいレベルにまでなってきた。面白い、と、受け入れ難い、のバランスが、少しずつ「受け入れ難い」の方に傾いてきている。『凪のあすから』。こういうウェットなドロドロは、ぼくにはちょっとキツイかなあ、と。
●『ガッチャマンクラウズ』の第二期の制作が決まったという話を聞いて、やはり人気があるのだなあと思ったけど、それってちょっとどうかなあとも思う。この作品はとてもおもしろいものだけど、この設定、この枠組みでやれることは既にやりきっていて、可能性はもう使い尽くしているように思われる(だからこそおもしろかった)。同様の主題をさらに突き詰めるとしても、また別の設定、別の枠組みで仕切り直す必要があるんじゃないだろうか。それを、もう一度「ガッチャマン」で…、というのは、作る側からしたら相当苦しいのではないだろうか。
ヒーロー物なんてもう古いよ、というのをヒーロー物で無理矢理やったのが「クラウズ」だとすれば、その先の「ガッチャマン」はいったいどうすればいいのか。ここでよほどすごいこと考えつかないと、面白かった一期さえしょぼくみさせてしまうような蛇足っぽいものになってしまう危険が大きい気がする。やるのならば是非、高いハードルを越えるすごいものが出来ることを期待したいのだけど。
(ほとんどの人がクラウズを使っているという環境を背景として展開しつつ、「はじめ」と「ベルク・カッツェ」の関係---あるいはそこに累が加わる---を突き詰めていくという方向ならば、かなり難しいと思う---ハードで思弁的なSFになってしまう---けどおもしろくなる可能性があるかもしれない、でも、それこそガッチャマンである必然性が限りなく小さくなるけど。)