●たぶん、26、7年ぶりくらいだと思うけど、ラオシャン(宝町店)のタンメンを食べた。味は、まったくかわっていないように思われた。
http://tabelog.com/kanagawa/A1404/A140407/14007084/
地元に引っ越してきてから微妙に気になっていた。ぼくが子どもの頃は、駅前じゅうに響く音量で、いつも、「ヒラツカ名物ラオシャン麺、ワカメにシナチクラオシャン麺、ラオシャンラオシャンラオシャンラオシャンラーオシャーン」というアナウンスが繰り返し繰り返し流されていた。動物系の旨味のあるダシをベースに酢を効かせた透明なスープ。どちらかというと素麺に近いようなモチモチでコシのない独自の麺。みじん切り玉ねぎとたっぷりのワカメが上に乗り、メンマが添えられる。それ以外には何もない。ちょっと他にはない不思議な食べ物。別に、昔は好きでよく食べていたとかいうわけではない。ただ、駅前じゅうに響く(バスを待っている間じゅうずっと聞かされつづける)アナウンスが物心つく前から刷り込まれていて、あの(アナウンスで聞いていた)「ラオシャン」がこの「ラオシャン(店)」なのかと気づいた(結びついた)のが中学生くらいで(小さいころはアナウンスを謎の呪文のようなものとして認識していて、駅前ではなぜいつも同じあの呪文が唱えられているのかと不思議に思いながら、なんとなくそういうものなのだろうと受け入れていた)、はじめて食べたのはおそらく高校生になってからだと思う。今まででトータルでも五、六回くらいしか食べたことはない。その度に、他では食べたことのない味だと思い、前に食べた時と同じ味だと思う。
●ぼくが子どもの頃と言えば、駅前にはいくつもデパートがあり、デパートの屋上には必ずプチ遊園地のような施設があり、さらに「デパートの食堂」という今では絶滅してしまったものがあって、それらは休日の「家族」が過ごす場であり、そこには、ラーメンやチャーハンから、カレー、オムレツ、ナポリタン、お子様ランチ、ソフトクリームなどまでの一通りのメニューがそろっていたりしたのだが、でもそれは今イメージされ食べられているそれらのもの(例えばファミレスのメニューにあるようなものとか)とは微妙に違う別もので、今からみるとまさに昭和レトロな感じの時代の食べ物で隔世の感があるのだけど、そのころからきっと同じ味で、しかもおそらくそのころから半世紀近くずっと他では食べたことがないような味でありつづけているのだろうと思うのだが、その、時代を超えたあまりに独自過ぎる独自性(広がりもせず、消えもしない)とはいったいどういうことなのだろうかと思ったりする。