●雨が降っている。梅雨にはいった。五月が終わってしまった。
リュック・ベッソンの、無茶苦茶ポストモダンな新作を観た、という夢を見た。荷台全体に美少女キャラがびっしり描きこまれたごつい痛車トラックで旅をしているアウトサイダー(ヴィンセント・ギャロ風)とポニョもどきのキャラ(この部分だけアニメで、人面魚の姿で宙に浮き、主人公のまわりをくるくるまわりながら甲高い声――グーグーガンモ風――で喋る)の二人組が、荒廃した移民たちの街で、腐敗した警察とかモンスターとかとバトルするという、思い切り安っぽいつくりなのだが、妙に勢いがあって、リュック・ベッソンの映画を初めて面白いと思った、と、夢のなかで思った。どちらかというと、アレックス・コックス風か。戦闘モードになると、ポニョもどきのキャラが興奮して、奇声をあげながら高速回転でくるくる回りはじめ、そうすると痛車トラックがごつごつした装甲車(美少女イラストは一部分だけ残される)へとトランスフォームする。
映画を観ているといっても、スクリーンを見ているのではなく、ぼく自身も半ばその世界の内部にいて、しかし非人称的な視点としてその世界を見ていた。
●このような夢を見たのは、『ブラック・ブレット』と『極黒のブリュンヒルデ』を寝る前に観た影響ではないかと言う気が、なんとなくする。でも何故リュック・ベッソンなのかは分からない。関係ないが、『極黒のブリュンヒルデ』を観ていると、何故か八十年代の蛭子能収のマンガを連想してしまう。とても安っぽいつくりで、しかしその安っぽさによって、陰惨さや痛々しさが増幅されているような感じが似ているのか。むき出しの安っぽさが、みもふたもなさとして、何かヤバいものを露呈させてしまっている感じ。このヤバい感じを隠ぺいするために、ぼくの脳はリュック・ベッソンを召喚したのかもしれない。