●昨晩遅くまで呑んでいたので昼近くに起きる。高原さんの奥さんの車で、向島尾道とは逆側の、立花という地区を案内していただく。
立花はすごくきれいな海岸沿いの集落で、男性長寿日本一という地区であるという。ちょっと前まではなにもないところだったのだけど、「ウシオチョコラトル」というチョコレート工場でありカフェであるようなところができてから若い人が集まるようになって、突堤の先の方にパン屋さんができたり、オシャレなレストランができたりしはじめた、と。
「ウシオチョコラトル」は、周りになにもない山の上にある打ち捨てられた公共施設のような建物にあるのだけど(以前は立花テキスタイルという草木染めの工房があったという)、中に入ってみるとカフェは賑わっていて、車で若いお客さんが次々とやってくる。施設の二階の一部だけを使っていて、一階にはすごく地味な郷土資料館のようなものもあり、それ以外のところは使ってないみたいでうらぶれている(海を見下ろす景色はすばらしい)のだが、そこだけ賑わっているという不思議な感じだった。
(尾道には「やまねこカフェ」という、尾道移住組の草分け的なカフェがあって、そこで働いていた人の一人が独立して、ほかに二人を誘ってつくった、みたいな感じらしい。)
人家から離れた突堤の先にぽつんとあるパン屋も、三台くらい車が停まれる駐車場では足りないくらい入れ替わり立ち替わりにお客さんが来ていた。どちらも、一体どこから人が現れるのかという感じで、ピンポイントに「そこだけ」賑わっていて、他はなにもなくのんびりした静かな感じ、というのが不思議でおもしろい。
(そのパン屋さんの先に、満ち潮になると戻れなくなる小さな浜があって、賑わっているパン屋のすぐ裏手なのに、もうまったくひとけがなくていい感じ。)
渡船で尾道に。車のまま渡船に乗るのははじめてで新鮮だった。
高原さんと別れ、すこし疲れがたまってきたので、はいじまさんと尾道からバスで三十分くらいの「養老温泉」に行って、温泉に入り、座敷でビールを呑み、しばらく昼寝する。半睡半覚の頭のなかに、周囲のお爺さんお婆さんたちの広島弁が入ってきて、くるくるまわって心地よい。夜は、はいじまさんと、はいじまさんの絵本教室の生徒さんたち(さかうえさん、のりとうさん)と呑む。尾道の人が「市内」「市内の人」という時、それは「尾道市内」「尾道の人」のことではなく「広島市内」「広島の人」のことだと言う。駅から歩いて十二、三分のゲストハウスに宿泊。呑んだ人たちと別れた後、真夜中の知らない町を一人で歩くなんとも言えない感覚。