●八日にある講義の準備。早稲田の「基本として、文系の学生に理系的な思考の重要性を知ってもらうための講座」で、ここ三年、年に一度ゲスト講師として話をしている。基本的に毎年同じネタだけど、年ごとにブラッシュアップはしているつもり(内容的にはという意味で、喋りは上手くならない)。以下、その内容の簡単なメモ。
●《アニメに現れるメディア横断的な「あの世」の表象から世界を考える、あるいは、インターネットは「あの世(彼岸)」をどのように変化させたか》
(あの世→彼岸、ここではないどこか、フィクション、夢、幻想、死後の世界、魂の在り処、心身問題—体と心の分離→テクノロジーが、そのような想像力と密接に関係していることについて)
●ネットも携帯もなかった世界
1.「ビューティフルドリーマー(84年)と「エンドレスエイト」(09年)の違い
(+「まどか☆マギカ(11年)→ループと計算)
2.「マイクロチップの魔術師」(81年、翻訳89年)→ネットワークが意識をもつというおそらく最初の物語(作者のヴァーナー・ヴィンジは、AIが自分より賢いAIをつくるようになる時代を予測し「シンギュラリティ」と最初に名づけた人)
●情報と物《情報の現実化と、現実の情報(非現実)化》
1.「攻殻機動隊(押井版)」(95年)→情報の現実化(SF)
2.「シリアルエクスペリメンツレイン」(98年)→現実の情報(非現実)化(オカルト)
●断絶と接続《相対性理論によって生まれる感情》
1.「トップをねらえ!」(88年)→「会う」ことでズレが認識される(時間が共有されないから「会う」ことが重要になる)
2.「ほしのこえ」(07年)→「会えない」ことで過去が絶対化される(客観的時間=共有されたものは温存される)
VR(仮想現実)とAR(拡張現実)《技術的なあの世》
1.「電脳コイル」(07年)→現実・仮想一体型
2.「ロボティクス・ノーツ」(12年)→多平面(多フレーム)型
●多世界の同時並列《たくさんのあの世》
1.「ゼーガペイン」(06年)→「一」と「多」と「反転」
2.「シュタインズ・ゲート」(11年)→多世界解釈と排他性の乗り越え
●技術的媒介なしで成立する多世界《中二病による「見立て」的なあの世》
1.「AURA 魔竜院光牙最後の闘い」(08年・13年)→「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(85年)的ディストピアにおける「あの世」の破綻
2. 「中二病でも恋がしたい!」(12年14年)→「あの世」の二重化よる破綻の回避
●表象・代表制の瓦解(一と多、ネットワーク、一般意志) 《「あの世」としての多=わたしたち》
1.「攻殻機動隊(神山版)」(02〜06年)→「多(ネット的錯綜)」と「一(国家・官僚・ピラミッド型)」の中間にある「公安九課(強い個)」
2. 「ガッチャマンクラウズ」(13年15年)→「多の可能性(多様性・集合知)」をどう表象するか(「わたしたち」が「あの世」である・「わたしたち」から「あの世」を引き出す)
●ネットワークは「この世」であり「あの世」である