●『SFを実現する』(田中浩也)にとてもおもしろいことが書いてあったので、メモとして引用する。
《私たちの細胞のなかには、実は3Dプリンタと似た機能がもともと備わっています。遺伝情報が書き込まれたDNAの塩基配列は、4種類の記号の組み合わせ、すなわち2ビットの「デジタルデータ」の列に他なりません。
このデジタルデータは、RNAに転写されたのちに、「リボゾーム」と呼ばれる細胞内の小器官で、20種類の材料に対応づけられるのです。そして、材料が運ばれてきて連結され、アミノ酸が組み立てられます。アミノ酸は、折り畳まれて、最終的に「タンパク質」が製造されます。
こうして、遺伝子という「情報」からタンパク質という「物質」が製造されるわけです。これを担っている「リボゾーム」が、デジタルデータからそれに対応する素材を取り出して組み立てるという意味で、いわゆる「デジタル工作機械(3Dプリンタ)」に近い役割を果たしています。つまり細胞内に存在する「工房」なのです。
ここで重要なのは、リボゾームそのものも50種類以上のタンパク質からできていることです。まるで3Dプリンタ3Dプリンタをつくるように、リボゾームはリボゾームも作り出しています。》
《「自分の身体も、実は情報が物質に転写されてつくられているのだ」という時事を知ってから3Dプリンタを改めてよく見てみると、なんだか自分の身体の中をのぞき込んでいるような不思議な感覚におそわれます。3Dプリンタは「自分の身体の奥の奥には、こんな感じの仕組みが潜んでいたのか」、ということを教えてくれる「モデル」でもあるのです。》
●もし、リボゾームがリボゾーム自身をつくり出すのと同じように、3Dプリンタが、(自分と同等の精度かそれ以上の)3Dプリンタを自らつくりだすことができるようになるとするならば、「技術」というものがまた一つ、ヤバい閾を越えてしまうことになるのではないか。