●『響け!ユーフォニアム2』、第11回。高坂の滝先生への感情についいての問題は、一応、今回をもって区切りがついたという感じなのだろう。田中先輩問題に比べるとずいぶんあっさりした感じだけど、
黄前の猫被りガードは完全にダダ漏れ状態で、もはや、内省がそのまま台詞になってしまっているレベルにまで緩んでいる(駅前の信号のところに、加藤、川島と三人でいる場面での高坂についての台詞)。そして、相変わらず人の心を深くまでえぐる、サディスティックな、言わなくてもいい一言を言う。高坂「滝先生、奥さんのこと大好きだよね…」。黄前「…だって、結婚するくらいだもん」。ここでダメ押し的に「結婚」を強調する必要などないはずなのに、これはあきらかに、怒って自分を無視していた、そして滝先生の奥さんについて「黄前から聞いた」と嘘をついて黄前の印象を悪くした、高坂への報復の一言だと思う。これより前の大吉山の場面で黄前は、「もう奥さん、いないんだよ」「わたし、応援してるよ」と、さも味方であるようなことを強調しておいて、ここでは「結婚するくらいだもん」と、「結婚」を強調して針で刺してくる意地悪さ。でも、この意地悪さのおかげで、この場面が、よくあるきれいな場面で終らない含みを得る。
一方、高坂の方も、大吉山に登ってゆく場面で、黄前には行き先を知らせないまま、自分だけはちゃっかり寒くないようなもこもこしたセーターを着てきて、行き先を知らない黄前が薄着で来て、寒い思いをしてざまあみろ、みたいな意地悪さがある(ここでの黄前の私服のダサさがとても黄前っぽくてすばらしい)。
こうして、「小さな意地悪」を交換することで、怒りやもやもやといった、自分ではコントロールできない感情を解消して、関係を修復する。この二人は、そういうことが可能な関係である、と。このような、とても繊細で絶妙な描写の積み重ねで、この作品はできている。