タックスヘイヴン関連の新たなニュースがきた。「パラダイス文書」 明らかになった超富裕層の租税回避の秘密(BBCニュース)。
http://www.bbc.com/japanese/41881881
こうやって、情報を隠しておくことが事実上困難になりつつある現在、否応もなくいろいろ明らかになり、この世界のまったく理不尽な富の集中に関して、少しずつでも何かが変わっていかざるを得なくなるのだろうか。それとも、タックスヘイヴン的なものは、まとめてまるっと、仮想通貨的な技術に置き換えられることで地下へ潜って、無傷に生き残り、今まで以上に闇の底へと脱去し、当事者以外には誰にもみえない領域に沈んでいくことになるのだろうか。
(タックスヘイヴンの問題は、たんにお金持ちの財産隠しや税金逃れにあるのではない。ぼくは、お金持ちがお金をいっぱい持っていることが悪いとはまったく思わない。ただ問題は、タックスヘイヴンが存在することで、それ以外の国も課税の累進性を抑制せざるを得なくなること。それによって、(世界的に)裕福ではない層の税負担がどんどん増えているということ。もう一つは、多国籍企業による、途上国からの搾取を可能にするということ(しかも、地元のエリートと結託して)。それによって途上国の経済発展が阻害される。この二つこそが大きい。基本的に、多国籍企業が巨大であればあるほど、法人税を少ししか払わないでもよくなる(企業の「数学的に美しい」租税回避システムが存在する)。そして、その少しの法人税タックスヘイヴンである国に集中する。そして、タックスヘイヴンの国の国民だけが幸せになる。)
(上の記事に、「違法ではない」と書いてあるけど、イギリスは、基本的にどこの国の法律も適応されない空白地帯を提供していて、そこで取引を行うのだから、大概のことをしても「違法ではない」ことになる。そして、そこで「何をしている」のかは、外に出ないように守秘法で守られている。このこと自体が問題であるはず。)
U2のボノは、2011年に出たニコラス=シャクソンの『タックスヘイブンの闇』でも、既に名指しで批判されていた(「アフリカの貧困に目を向けよ」と公的に発言しつつ、自分の音楽関係の権利を扱う事務所を導管体タックスヘイブンであるオランダに置いている、と)。ボノ氏が釈明「報道を歓迎」 パラダイス文書に記載(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASKC74W7NKC7UHBI00W.html
●こんなニュースも。Appleタックスヘイブンをジャージーに変更――南ドイツ新聞とICIJがリーク(TechCrunch Japan)。ジャージー。「王室属領」というイギリスの「外の内」という微妙な位置。
http://jp.techcrunch.com/2017/11/07/20171106apple-has-reportedly-relocated-its-international-tax-residency-to-jersey/amp/
《ジャージーはフランスのノルマンディー半島沖に浮かぶ人口10万人程度の小さな島国〔イギリス王室属領〕だ。もっとも重要な点はジャージーでは企業は原則として課税されないことだろう。Appleはこれまでもジャージーを経由して利益を移転していた。》
Appleの海外での利益はまずApple Sales Internationalというアイルランド子会社に移される。ICIJの調査によれば、同社は2009年から2014年までの間に1200億ドル以上を受け取っていた。》
《2つめの子会社はApple Operations Internationalと呼ばれ、この1200億ドルの大部分を配当収入として得る。2社得る利益の大部分は本社に属するものがだが、子会社は企業に課税する地域に登記されていない。両社への課税はまったく行われず、Appleの課税基準収入を著しく下げていた。》
Appleの租税回避テクニックはテクノロジー企業の間できわめてポピュラーな方法で、ダブル・アイリッシュという名前までついている。EUが2014年にダブル・アイリッシュを禁じたのはヨーロッパ各国政府からの強い働きかけがあったからだ。》
EUの税務調査とダブル・アイリッシュの廃止がAppleに登記をジャージーに移転させたものらしい。オフショア法律事務所のApplebyはAppleがジャージーペーパーカンパニーを設立する手助けをした。今回の暴露はSüddeutsche Zeitung〔南ドイツ新聞〕とICIJが入手したApplebyの内部文書によるものだ。》
Appleの「課税最適化措置」はそれ自身として違法ではなさそうだが、国際的な資金操作を行っていない他のもっと小さい企業に比べてAppleに対する課税が格段に軽いことを正当化するような理由もまた思いつかない。今回のAppleがいい例だが、租税回避のテクニックは日々変化しているものの、タックスヘイブンの本質は巨大多国籍企業に利益をもたらし、不公平な競争を生む根源だ。》