●具体的な内容は恥ずかしいので書かないが(というか、感触の具体性はすぐに干からびて遠のいていってしまい、形骸化するのだが)、とても幸福な夢をみて目覚めた後というのは、ああ、あれは夢だったのかという、未だからだじゅうに満ちている幸福の余韻のなかに染みのようにぽつりと浮かぶ落胆というか、残念さというか、切なさであり、それがじわじわと広がっていく感触であるのだけど(そして幸福はじわじわと、しかし跡形もなく去っていくのだけど)、同時に、自分はあんなようなことを(あんなような状態を)望んでいるのかという、「なんだよお前は」みたいな「呆れ」の感覚であり、気恥ずかしさであり、苦笑のような感じでもあって、そしてそこには、それは「現実」としては決して存在しないもの(状態)なんだ、その幸福への希求には行き先がないんだという、そういう諦観と痛切が混じっている。
人間というもの(それはつまり「わたし」ということなのだけど)の根本的な「頭の悪さ」が、世界の諸悪の根源なのではないかという気持ちをいつも抱いているのだけど、しかしもう一方で、人間の(つまり「わたし」の)頭の中味が必要以上に複雑になり過ぎていて、そこに発生する欲望や感情が、この世界のなかで指示対象を失ってしまっているのではないかという感じを、このような夢の後にいつも感じる。